〈ナイキ〉のイノベーションを象徴するランニングシューズであるとともに、ファッションアイコンとしても幅広い層から支持され続けている「ナイキ エア マックス」。近年のスニーカーシーンの盛り上がりも相まって、その存在感は高まるばかり。なぜこのシューズは人々を魅了してやまないのか? AからZまでの26のキーワードとともに、その魅力を解き明かしていきます。3月1日から26日まで毎日更新!
Edit_Issey Enomoto, Hiroshi Yamamoto
Art Work_Koji Yamaguchi(BY ONE)
ZERO
「エア マックスの日」の今日、29年のときを経て蘇る「エア マックス ゼロ」。その誕生の舞台裏。
自動車業界では一台の新車が完成するまでに数え切れないほどのデザインスケッチが描かれることも珍しくないという。
それと同じように、〈ナイキ〉の「エア マックス 1」が誕生するまでにも、いくつかのデザインアイディアが提出されていた。デザイナーのティンカー・ハットフィールドによるそのなかのひとつが「エア マックス 1」として陽の目を浴びたわけだが、結果的に採用されなかったスケッチのなかにも、興味深い特徴を持つものが存在することが最近になって確認された。
そして、そのデザインが現代の生産技術やテクノロジーと融合することによって、「エア マックス 1」が誕生した「エア マックスの日」の今日、蘇った。それが「エア マックス ゼロ」である。
このプロジェクトの陣頭指揮を執ったデザイナーのグレアム・マクミランによると、「ティンカーが当時描いたデザインスケッチは、エア マックス 1をもっと現代的にしたもののように見えた」という。特に目を引いたのは、つま先の補強パーツを排除したことと、内蔵のヒールカウンターを用いずに踵部分は外側からストラップを取り付けた構造。それらによって、当時のランニングシューズにはない斬新なデザインをティンカーが追い求めていたことが理解できたというのだ。
当初の設計意図をティンカーから伝えられたグレアムをはじめとする開発陣は、「エア マックス 1 ウルトラモアレ」に採用された真ん中部分をくり抜いたファイロンのアウトソール、サポート性と素材の重なりによる段差を抑えたフューズ製法のアッパーなど、スケッチが描かれた当時には存在していなかったテクノロジーを組み合わせた。こうして「エア マックス 1」が誕生する以前の幻のシューズを復元することができたのである。
Photo_Osamu Matsuo
Text_Masahiro Minai