2016年のスニーカーシーンにおいてスマッシュヒットを記録している〈リーボック クラシック〉の新定番モデル「フューリーライト」。その誕生の歴史をランニングシューズ評論家の南井正弘が徹底解説。加えてフューリーライトを履きこなすコツも伝授。スニーカーカルチャーとして、ファッションとして、この新定番と呼び声の高い名モデルの魅力に迫ります。
Photo_Osamu Matsuo
Text_Masahiro Minai
Edit_Hiroshi Yamamoto
2016年春、渋谷や原宿といった東京の繁華街を歩くと、何人もの若者が〈リーボック クラシック〉の「インスタポンプフューリー」を履いているのを見かける。東京ほどではないが、昨年11月に訪問したニューヨークやポートランドといったアメリカの都市でもチラホラ履いている人を発見することができた。
このシューズは今から22年以上前、筆者がリーボックジャパンでプロダクトを担当していたときに発注を担当した。オリジナルは圧縮炭酸ガスを特殊な器具で注入することで瞬時にシューズと足の一体化を実現したことから、インスタポンプと呼ばれたポンプシステムの進化形を搭載したランニングカテゴリーのトップモデルとして開発。デザインはニューバランス勤務時代には現在もロングセラーとして高い人気をキープし続けるM997を担当したスティーブン・スミスによるもの。
1994年にリリースされたモデルだから1993年にはスケッチやプロトタイプサンプルを見ていたが、その当時は「かなり思い切ったデザインだなぁ。レッド、イエロー、ブラックのカラーコンビネーションも奇抜だし…」と思い、コストから日本における価格を計算すると2万円弱という高価格になった。そのために思い切った量の発注はできなかったし、このシューズが20年以上経過してもストリートシーンで愛される存在となるとは全く想像できなかった。
インスタポンプフューリーの初代モデルは1994年の発表。
その革新的なデザインとカラーコンビネーションで、デビュー翌年に大ブレイクすることに。
実際リリースされた1994年のセールスは芳しくなく、同年12月のファミリーセールに格安で出品されたほど。しかしながら1995年に入って、高機能なスポーツシューズをストリートシーンで履くことがトレンドとなると、徐々に人気を集めることに成功。さらに雑誌『Cut』でアイスランドの歌姫であるビョークがこのシューズのファーストカラーを履いた写真が掲載されると大ブレイク。
エアロスミスのスティーブン・タイラーも同じくファーストカラーを履いてステージを飛び回ったことも追い風となり、’90年代中期のハイテクスニーカーブームをリードする存在となった。その後もインスタポンプフューリーは数々のカラーバリエーション、マテリアルバリエーションが発表され、ストリートシーンにおいて確固たるポジションを築くことに成功。
最近ではスポーツシューズの歴史において屈指の名品との声も聞かれるようになった。そんなインスタポンプフューリーだが、立場上「人気の秘密はなんだと思いますか?」と聞かれることがよくある。そんなときには「デビューから20年以上が経過しても古さを全く感じさせない革新的なデザインが一番大きな理由だと思います」と答えることが多い。
そう、インスタポンプフューリーが現在まで人気をキープしているのは履き心地のよさとか、カスタムフィットが簡単に行えるからといった理由ではなく、その斬新なデザインによるところが大きい。
そうであれば、「基本デザインを継承しつつ、インスタポンプを省略してリーズナブルなモデルを開発したらどうだろう!?」というアイディアが出ても不思議ではない。そして2015年に「フューリーライト」は誕生した。
カラーリングはもちろんのこと、アッパーマテリアルに関しても
さまざまなバリエーションが用意されているのもこのモデルの魅力だ。
履き心地に大きな影響を与えるインソールはOrtholite社製のタイプを採用。
通気性とクッション性に優れ、快適な履き心地を提供する。
これまで30年近くスポーツシューズ業界に関連した仕事をしてきた経験から言わせてもらうと、このようなアイディアから誕生したプロダクトは失敗するケースも少なくない。しかしながら今回リリースされたフューリーライトは登場以来良好なセールスを記録しているようだ。
アッパーはインスタポンプフューリーからインスパイアされたデザインを採用。インスタポンプのテクノロジーは採用していないものの、ブラッダー(空気室)をモチーフにしたアッパーデザインはインスタポンプフューリーを彷彿とさせる。シューレースは伸縮性に優れたラバーストリングス(ゴム紐)を採用することでオリジナルのインスタポンプフューリーと同様のイージーな着脱を実現。
ミッドソールとアウトソールを一体成型し、ソリッドラバーのパーツを最小限に抑えることで、軽量性、クッション性、耐久性を兼ね備えた3D ULTRALITE SOLEのソールユニットの採用により比類なき軽量性も確保。これらのスペックを結集したフューリーライトは、スタイリッシュなデザインと快適な履き心地を高次元で融合することに成功している。
ソールユニットはミッドソールとアウトソールを一体成型し、軽量性、クッション性、耐久性に優れた3D ULTRALITE SOLEを採用。
そしてこのモデルでうれしいのは税抜きで1万円を切るリーズナブルな価格設定。このプライスならコーディネートやその日の気分によって、何足かの履き替えを楽しむことができそうだ。
実際にフューリーライトを履いてみると、まず感じるのが、その軽さ。3D ULTRA LITE SOLEを使用することで、本当に軽量に仕上がっている。必要充分なクッション性も確保しているのもうれしいところ。さすがに激しい運動には向かないが、長時間の歩行でも快適な履き心地をキープしてくれた。
ちなみにフューリーライトはゴム紐を使用していて、着脱が簡単なところも大きなベネフィット。飲食店の座敷に上がるときなど、欧米と違って日本では靴を脱ぎ履きする機会が本当に多いが、そんなときにもこの構造は有難い。
すこしのズレも許せないコアなスニーカーフリークは「どうせインスタポンプフューリーの廉価版でしょ!?」というかもしれないが、実際に履いてみるとフューリーライトというシューズの実力がわかるはず。ぜひトライしてほしい一足だ。
南井正弘
1966年愛知県西尾市生まれ。50歳。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。
Reebok CLASSIC
FURYLITE
フューリーライトは、編み込みを施したウーブンパック、グラデーション配色を採用したテックメッシュパックなど、2016スプリングシーズンのコレクションにおいても豊富なカラー&マテリアルバリエーションをラインナップしている。各¥9,500+tax
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