COLUMN

Translated By DeepL

Curry Flight

Text and Photographs: Curry Cell

Along with ramen, curry is one of Japan's soul foods. In recent years, there has been no end to the number of "addicts" who are captivated by the fascinating taste of curry and its mellow aroma of dazzling spices. The mysterious charm of curry is that it makes you want to eat it and talk about it at the same time. In order to explore this profound world of curry, we asked Mr. Curry Cell, who boasts overwhelming knowledge and experience in eating curry, to act as our guide. Curry is a reading material.
 
An intellectually curious journey through curry.
Let's fly with curry today. To somewhere unknown.

第2便 ドライカレーの世界。

Curry cells.

 

今回は、私のカレーライフの大きな軸となったドライカレーについて、少し旅してみましょう。

原点はドライカレー。

私が外食カレーを食べ歩く原点となったのは高校時代。80年代ですね。

神戸、長田の古い町並みにあった「印度屋本店」が、私が初めて通ったカレー店でした。

「インド人もびっくり」というキャッチコピーのもと提供されていたカレーは2種。

ガツンとブラックペッパーが効いたカレーライスともうひとつ、カレーとライスをまぜたドライカレーに生卵を落とした、その名も「独特カレー」。

 

しかしその後、阪神・淡路大震災で長田一帯は大火災に。

 

一週間後、私が現地へ行ったときには、空襲の記録写真でしか見たことのないような、焼け野原が広がっており…、「印度屋本店」の建物も跡形もなく消えてしまったのです。

 

デジカメもなかった当時のカレー写真は残っていないのですが、後にとある場所で再開することができた「独特カレー」の写真がこちら。

「おらが茶屋」で一時復活していた「印度屋本店」の独特カレー。

 

手作り感満載ながら、真ん中のライス窪みに落とされた生卵など、今主流の「映える」ドライカレーの原型が見てとれませんか?

     

ドライカレーの発祥は?

 

みなさんが「ドライカレー」というコトバを聞いた時、まず2つのビジュアルが思い浮かぶのではないでしょうか。

 

ひとつは、昔ながらの喫茶店でお馴染みチャーハンやピラフタイプ。グリンピースやレーズンが入ったアレですね。

 

そしてもう一つは、ご飯の上にスパイシーなキーマ(挽肉カレー)が載ったタイプ。最近はカフェ飯として出会う機会も増えてきました。

 

前者のチャーハン/ピラフタイプの発祥は、正直定かではありません。

 

だって、ドライカレーとカレー炒飯、ビリヤニ…どこからどこまでをドライカレーと呼ぶのか、判断が難しいですから。

 

少なくとも日本においては、19世紀に英国から入っていたカレー粉が20世紀初頭に国産化されたのをきっかけに、カレーうどんなどと同様、カレー味のごはんが試されるようになったと考えるのが自然でしょう。

 

そして後者のドライキーマのせご飯タイプ。

 

こちらは実は、船の上で生まれたと言われています。

 

1910年代、日本郵船の客船だった「三島丸」の食堂メニューとして、揺れる船の上でも食べやすく、船酔いで食欲減衰しても食べられるドライカレーが発案されました。

 

当時の資料として、ディナーメニューにちゃんと「Lobster & Dried Curries」という文字が残っており、これが記録に残るドライキーマのせご飯タイプの最初とされています。

 

そしてこの「三島丸」当時の味を現代風にアレンジし提供しているお店がこちら丸の内「ポールスター」。

「ポールスター」のドライカレー。フライドオニオンの食感もアクセント。

ドライカレー好きなら一度は試しておきたい味です。

 

ただし、ざっくり「ドライカレーの発祥は?」ということになると、答えは簡単ではありません。

 

なにせ定義を広く捉えるなら「Dry Curry」=「汁気のないカレー」ですから。

 

前述したドライキーマだって、ライスに乗せるのでなければインドに古くからありますし、それが英語で「Dry Curry」と紹介された古い文献だってあります。もっと言うならマレーシアのルンダンだって、ベンガルのブナだって、わらわれから見ればドライカレーと言えてしまう。ではビリヤニは?……この辺で止めておきましょう。

ドライカレーと珈琲。

 

私の食べ歩きの原点だった「印度屋本店」には、「インド人もびっくり」ともう一つ「独特のカレーと濃いコーヒー」というキャッチコピーがありました。

 

そう、私にとって「世界一美味しい珈琲は、カレーの後の珈琲」。

 

特に辛さやスパイスが汁気で流されず口にとどまるドライカレーの後の珈琲は格別なものです。

 

ドライカレーと珈琲、その組み合わせのお手本といえばやはり中野「カフェハイチ」。

   

創業1976年、かつて新宿西口で熱烈な支持を集めていたものの2011年に一旦閉店、2016年に中野で復活したドライカレーのレジェンドです。(注:かつてのFC店は新宿その他で営業継続されています)

中野「カフェハイチ」のドライカレー。印象的な器は北海道・こぶ志焼。

   

こちらの食後の珈琲、注目すべきは「香り」。

 

湯気の香りが逃げないよう、深めのマグカップを使用、さらに卓上のブランデーを一振りして香りをブースト、さらに口内へ流れ込むと、歯間に留まっていたスパイスの香りが、雨上がりに芽吹く新芽のようにブワワッと拡がるのです。

     

ドライカレーとデザイン思考。

   

ドライカレーは固形です。つまり造形としての面白さがあります。

 

見た目の美しさや個性だけでなく、食べ進んだときの味や食感の変化も自在でまさに「食べるデザイン」。

 

実際、独創的なドライカレーを生み出すシェフにデザイン界隈の方が多いのも頷けます。

「映えるドライカレー」として真っ先に名前が挙がるのが神宮前「MOKUBAZA」。

 

こちらの店主もグラフィックデザイン出身。

 

私が好きなナッツキーマは、ブラックペッパーとカルダモン香るドライキーマにナッツの食感、途中からとろける黄身と、見た目だけでなく味や食感の変化にエンタメ性抜群。

 

その他「チーズキーマ」「焼きアボカドキーマ」など、バリエーション豊富で堪りません。

ガツンとした刺激も味わえる「ナッツキーマ」。その秘密はインド産ブラックペッパー。

 

ドライカレーの楽しみ方はまさに多彩。

 

何よりもいつでも気軽に、刺激とトリップ感を得られるのが最大の魅力であります。

 

スパイスと具材、刺激と香りがギュッと凝縮したドライカレーのように、濃厚な人生を送っていきたいもの。

さて次回はどんなFlightをしてみましょうか。

PROFILE

Hiroaki Matsu (Curry Cell)
Curry curator/video creator

In pursuit of all kinds of curry and strange creatures. A spice radar by nature, he has visited more than 3,000 curry restaurants in Japan and abroad. He has been featured in many magazines and TV programs, and is a member of the Japanese Curry Awards selection committee.

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