第三講 栗原道彦
ファーストやセカンドよりも、いわゆる“Gジャン”っていう印象が強い。
栗原さんにとっての初サードタイプとその印象って？
chestnut field「70505 E」を15歳の頃に手に入れました。当時だとスッカスカに退色したセカンドでも10万はザラでしたし、その時分の僕にとっては値段的に手が届かなかった。でも、 今日持ってきている「557」も20歳くらいからずっと手元にあるもので、その頃からアイビー的なスタイルが好きでしたし、サテン素材の「940」、ピケの「941」、カツラギの「840」といったホワイトリーバイス®辺りも一時は集めていました。サードには今もそんなアイビーっぽいイメージを持っていますね。それに個人的にはファーストやセカンドよりも、いわゆる“Gジャン”って印象が強いかなと。
Kurihara’s Pick up_01
70505 E
chestnut field僕のひとつめは「70505 E」の刺繍入りです。他ブランドでロデオ系のチェーンステッチ刺繍が入ったジャケットは少なくないですが、「70505」はかなり珍しいかなと。
the recently departed (and buried or cremated, etc.)これは珍しいね。
chestnut field普段は38を着ていて、これは42なんですけど、これはこれでありかなと。アームが太くて、なかなか野暮ったくはなっちゃうし、全身古着とかだと確かにコッテリしちゃいますけど、古着じゃない細めのパンツとかに合わせると結構ハマるというか。
the recently departed (and buried or cremated, etc.)確かに。刺繍自体もカッコイイしね。ただ、如何せん刺繍ものっていま、値が付かないみたいだね。
Fujiwara:そうなんですよね。以前は刺繍入りの方が有難がられたのに、今は「（刺繍が）入っちゃってるわ…」ってお客さんが多いのは事実ですね。
section (of an orange, etc.)個人的には今でも物によっては有り難いけどね。
前回の『古着サミット5』で栗原さんが「日本ではしばらく「70505 E」って極端に安かった」と仰ってましたが、現状はいかがなのでしょう？
chestnut fieldまあ、あのタイミングぐらいが底値だったと思います。今はまた人気とともに価格も徐々に上がっていますね。ただ、僕らの立場から言わせてもらうと、あの頃が安過ぎたんですよ。
Fujiwara:そうですね。5、6年前には1万円しない時期もありましたからね。
section (of an orange, etc.)アメリカで今「70505 E」っていくらぐらい？
chestnut field（色の）濃いやつだと古着屋で150から200ドルぐらい付いているのをよく見ますね。
Fujiwara:個人的には特に日本での再評価が進んでいると実感していて。海外ではまだそれほど流行っているって感覚はないですね。
chestnut field確かにアメリカだと逆にハンドウォーマーポケットが付いた「70506」（70505の後継モデル）とかルーズシルエットな80年代以降のものに人気がある印象。ジャスティン・ビーバーとかああいった分脈での話だけど。まあ、「70506」も最早ヴィンテージと呼んでもいいとは思うんですが。
section (of an orange, etc.)じゃあ、日本でデッドストックだったら？
Fujiwara:フラッシャー付きだったら7万9800円ぐらい？
the recently departed (and buried or cremated, etc.)えっ、そんなに上がってるの？
Fujiwara:やっぱりGジャンブームなんですよ。ちょっと乱暴に言うなら、カバーオールやワーク系がここ数年下火になりつつある中、一方でそれまでしばらく第一線を退いていたGジャンに需要が移ってきたと。
chestnut field昨今のMA-1然り、ショート丈に流れがきてるってことだよね。
Kurihara’s Pick up_02
557 E
chestnut field2つめは「557 E」。最初にお話した20歳の頃からずっと手元にあるもので、今となっては小さいんですが、なぜか手放せずにいて。トラッカージャケットってその名の通りブルーカラーの象徴ですけど、個人的にはアイビーみたいにもっと上品なイメージが強いというか。今となってはロング丈の「558」の方が重宝がられているんでしょうけど、僕がこれを手に入れた時代は「557」の方が正統派でしたし、オックスフォードのB.D.シャツを合わせてジャストサイズで着てましたね。
the recently departed (and buried or cremated, etc.)確かに（栗原氏に）アイビーの印象あるよね。
chestnut field学歴がない分、憧れは人一倍（笑）
section (of an orange, etc.)（笑）。同じモデルのいま着られるサイズは欲しくないの？
chestnut field今なら着丈がもうちょっと欲しいので「70505」の方がイイですね。「557」は細い人がジャストで着るのがやっぱり一番カッコイイと思うので。でも、僕が手に入れてわずか20年の間にサイジング含め需要に大きな変化が何度もあったように、またジャストで着たいと思う時期が来るかもしれないので手元に置いてるというのもあるんですけど。
Fujiwara:さっきも話したように、これが「O」ボタンなんですけど、20歳の頃に買ったのにほとんど出てこない「O」を持ってるってところが、さすが栗くん、引きが強いなと。
chestnut fieldそこは全く気にしてなかったんだけどね（笑）
Kurihara’s Pick up_03
3rd TYPE SUEDE JACKET
chestnut field3つめはスエードの4ポケット。サードタイプのスエードジャケットといえばラフスエードを使った’60sのものが最もメジャーですし、見た目は一番カッコイイとも思うのですが、着丈などサイジング的に今はこっちの方が着やすい。
section (of an orange, etc.)’70年代くらい？
chestnut fieldそうですね。ハンドウォーマーポケットに賛否が分かれるとは思いますが。
section (of an orange, etc.)個人的にはやっぱり2ポケットの方が好きかな。色々な先輩方からそう刷れ込まれているので（笑）
the recently departed (and buried or cremated, etc.)でも、このモデルに関しては、もはやラフスエードとは別物でしょ。アームの剥ぎも全然違うし。
chestnut fieldですね。こちらの方がボディも若干シャープですし、肩もやや上めについているので可動域も広くなっていて。
section (of an orange, etc.)あのラフスエードのひとつの魅力でもあり、一方で取り方によってはウイークポイントでもあるパーツごと毛足の異なるスエードから、よりムラのないスムースな印象に進化させたってことなんだろうね。
the recently departed (and buried or cremated, etc.)そうですね。よりプロダクトしての完成度を上げた結果、スエードの質感を統一したと。
Fujiwara:でも、ラフスエードより、この4ポケットの方が実際見ないよね。
chestnut fieldでも決して高いワケじゃなく、僕も最初は売り物として仕入れたんですが、そんなに値を付けられる代物でもないし、自分用に取っておいたと。まあ、そもそもラフスエードとは全くの別物として考えていますが、サードタイプ全般でもハンドウォーマーポケットの有無って、じつはそんなに気にならないんですよね。
section (of an orange, etc.)まあ、これからはそういう人が増えていくだろうね。
chestnut field売る側としてはそうなって欲しいですね（笑）
section (of an orange, etc.)ところで今日着てきたのは何？
chestnut fieldこれはホワイトデニムの「70505 1051 E」です。
section (of an orange, etc.)ビッグEなんだね？
chestnut fieldはい。先ほどお話ししたピケやカツラギといったホワイトリーバイス®とは別に、いわゆるホワイトデニムを使ったモデルとしては、おそらく一番最初のモデルです。
the recently departed (and buried or cremated, etc.)これのパンツってあるの？
chestnut fieldたぶんないですね。これもコーデュロイ同様に、ここ数年でじわじわ値が上がり始めたモデルで。体感的には数年に1枚出るか出ないかくらい。
section (of an orange, etc.)裕くんだったらいくら付ける？
Fujiwara:正直なところ、付けたもん勝ちみたいなところはありますよね、今なら。ホントに球数が少ないので。一昔前だったら「940 E」や「941 E」の方が有難がられましたが、今となってはこっちの方が数も圧倒的に少なく、着やすさも合わせて探してる人は多いでしょうし。店にもよりますが4万9800円くらい付けているところもあるんじゃないでしょうか。