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古着サミット6 おなじみの古着好事家4名がいま気になる古着とは?

Exclusive Vintage Meeting

Vintage Summit 6: What's new in vintage clothing for four well-known vintage clothing enthusiasts?

フイナム名物企画「古着サミット」もスピンオフまで合わせると、おかげさまでラッキーセブンな7回目を迎えることができました。正規ナンバリング企画では第6弾となった今回も、業界屈指の古着好事家として知られるお馴染みの面々、今野智弘、藤原裕、栗原道彦、阿部孝史の4名による熱きトークセッションをお届けします。彼らがいま気になっているブランドやカテゴリーを紐解くことで、これからの古着勢力図が大きく変わるとまで言われるほど、一部の人たちにはベリースペシャルな、そうでない人たちにはかなりマニアックな…、現在進行系の古着の世界へとご案内していきましょう。

  • Photo_Takeshi Kimura
  • Text_Takehiro Hakusui
  • Edit_Yosuke Ishii
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今野智弘 / NEXUSVII. デザイナー

1977年生まれ。2001年 N.Yより〈ネクサスセブン〉を始動。3月には試験的直営店舗「ヴィーイーエル(V.E.L.)」にてヴィンテージバーバリーをフィーチャーしたNEXUSVII. presents『VLACK VINTAGE SHOW』を開催したばかり。

藤原 裕 / BerBerJin ディレクター

1977年生まれ。高知県「ジョン万次郎資料館」のリニューアルオープンに合わせ、ジョン万デニムをプロデュース制作。限定120本を完売させた。また、去る2月24日、25日の「ベルベルジン」20周年で放出されたスペシャルピースはヴィンテージファンの間で話題に。

Michihiko Kurihara / Vintage Buyer

1977年生まれ。2011年よりフリーでの活動を開始。古着屋のみならず数々のセレクトショップやブランドからも絶大な信頼を集める日本屈指のヴィンテージバイヤー。先日、『アンプラグド』の取材で訪れたバンコクでも彼の名前は随所で聞かれるなど、その知名度は今やワールドワイド。

Takashi Abe / staff of beams online store

Born in 1976. He has been involved in men's fashion magazines as an editor and writer, and has handled many articles related to vintage clothing. He is currently in charge of writing for his company's website, and is also known as a collector of vintage bandanas.

Lecture 1: Tomohiro Konno

「かたち、生産国、素材、仕様と、“役”が付つほど高くなる」

80’s Burberrys’ Tielocken Coat

the recently departed (and buried or cremated, etc.)今回もまずは自分から。ひとつめは〈バーバーリー〉の「タイロッケンコート」を。

section (of an orange, etc.)いま一番熱いかもね。いまヤフオクとかでも〈バーバリー〉で検索すると、【一枚袖】って検索用ワードを結構見かけるほど、みんな探してるみたいね。

chestnut fieldへえ。それは「タイロッケン」に限らず、普通のトレンチやステンカラーでもあるものなんですか?

section (of an orange, etc.)うん、あるよ。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)タイロッケンはもともと1800年代後半から生産が始まり、一時的にほぼ市場からなくなっていたもので、中でもイングランドメイド、オールコットン、一枚袖となると、自分はこの1着しかいままで見たことがない。トレンチの原型とも言われているコートなんですが、個人的にはトレンチよりも着やすいですし、他の人ともカブりにくいバーバリーなのかなと。これは80年代頃のものと譲っていただいた方から聞いてます。

Fujiwara:一枚袖って、要はアームに剥ぎがないってことですよね?

the recently departed (and buried or cremated, etc.)そう。普通は剥ぎ目のある二枚袖が一般的なんだけど、トレンチもステンカラーからも一部一枚袖が見つかっていて。自分はたまたまイングランドメイドのものを手に入れることができたけど、ほかの生産国のものでも、そこまで見たことがない。

Fujiwara:それはチャイナメイドとかってことですか?

the recently departed (and buried or cremated, etc.)チャイナじゃなかったと思うけど。

chestnut fieldイングランドメイド以外は全部ライセンス商品なんだと思っていたんだけど、違うんですか?

the recently departed (and buried or cremated, etc.)多分ライセンスだとは思うけど、その中にもまた珍しいとされる生産国があるようで。特にフランス製は生産期間が短かったみたいだし、先日、水戸のストレイシープ(欧州ものに強いヴィンテージショップ)さんにお手伝いいただいて、ヴィンテージバーバリーのイベントをやったんだけど、その時に聞いたのは〈バーバリー〉のコートを数千枚見つけてもフランス製のは1枚あるかないかというくらいみたい。

section (of an orange, etc.)この間、高円寺のとある古着屋さんで一枚袖が何着か出ていてチェックしたら、フランス製のオールコットンも1枚あったよ。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)それでいくらくらい付けてるんですか?

section (of an orange, etc.)ゴッパーくらい。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)安い。

Fujiwara:5800円?

section (of an orange, etc.)いやいや、5万8000円だから(笑)

chestnut fieldてか、5万8000円で安いんですね(笑)

Fujiwara:僕も1万5800円とか1万9800円とかの世界だと勝手に思ってたんだけど。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)いやいや、〈バーバリー〉の定価って知ってます? 日本だと20万円以上からなんですよ。それを知ったら5万8000円なんて安いもんじゃないですか。これは受け売りなんですが、そもそもヨーロッパの富裕層向けに作られたコートなんで全世界的にも価格設定を下げたことが一度もないみたいで。

Fujiwara:なるほど。意外にするもんなんですね(笑)

section (of an orange, etc.)あとオールコットンとT/C(ポリエステル混紡綿)の2種類があるんだけど、オールコットンはとにかく数が少ない。というか、ほぼT/Cしか出てこないのが現状で。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)役が付いていくほど高いですよね。まずはかたち、続いて生産国、袖の仕様、素材と。とはいえ、自分も1年半ほど前に〈バーバリー〉が1着欲しいから、その前にちょっと勉強しておこうと思って知り合いの古着屋さんに集めてもらったら、その奥深さにハマったクチでして。別注品とかもかなりあるので、まだわからないことばかりなんですが。まあ、自分らってみんなアメリカ古着から入っているので、単純にヨーロッパものが新鮮だったって部分もあるんでしょうけどね。実はまた今年の秋口に向けてストレイシープさんの御協力のもとVLACK VINTAGE SHOWのヴィンテージバーバリー展の第2弾を開催予定なので楽しみにしていて下さい。

「シャーデーは曲名をブランドコンセプトに引用するほど、ゆかりのあるアーティスト」

90’s Hip-Hop&Black Music T-Shirt

the recently departed (and buried or cremated, etc.)続いては90年代のミュージシャンT。NASやスヌープ・ドギー・ドッグ、アレステッド・ディベロップメントなどヒップホップやブラックミュージックが中心です。

section (of an orange, etc.)僕はこの辺疎いんだけど、最近高くなってるんでしょ。

chestnut fieldそうですね。でも、海外での高騰ぶりと比べたら日本はまだマシな方ですよ。オーストラリアとかエラいことになってて。

section (of an orange, etc.)そうなんだ。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)NASは自分のブランドでもオフィシャルでTシャツ作ったくらい思い入れのあるアーティストですし、スヌープも確かファーストアルバムがリリースされたタイミングで殺人容疑がかかっていて(笑)、そんな悪いヤツの作った音楽なら聴いてみたいと思ってタイムリーでハマったアーティストのひとり。

section (of an orange, etc.)これって全部オフィシャルものなの?

the recently departed (and buried or cremated, etc.)どうでしょう? ブートも中にはあると思います。でも、じつはブートの方が少ないし、人気もあって。

section (of an orange, etc.)え? ブートの方が高いってこと?

chestnut fieldそうですね。例えばニルヴァーナとかでもオフィシャルだとある程度デザインが決まってしまっていて、ファンからすると見飽きた感じがあるのか、ブートでワケがわからないヤツの方が逆に人気があるみたいですよ。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)この間行ったインスピレーション(年1回LAとNYで開催される大型展示会)でもこの辺が結構出ていて、とんでもない価格が付けられてましたね。ディスカウントにも全く応じてくれなかったし。

section (of an orange, etc.)もうちょっと古めのアーティストTとなるとロック系ばかりだから、僕も一時はブラックミュージック系を探したことがあったけど、当時は全く出てこなかったな。これは誰?

the recently departed (and buried or cremated, etc.)セロニアス・モンクです。僕もブラックミュージック系を集めるにあたって、周りの人に聞いたら、とにかくマーヴィン・ゲイものが出てこないと。それから気にしてマーヴィン・ゲイばかり探したけど、じつはまだ1着も見つけられなくて。

chestnut field確かに見たことないかも。

section (of an orange, etc.)前に地方のショップで僕の一番好きなアーティストでもあるドナルド・バードのチャンピオンボディが出ていて、ちょっと他の店を覗いてる間に売れちゃったのを思い出したよ。この辺だけを集めているコレクターも少なくないんだろうね。

Fujiwara:みんなちゃんと音楽聴いてるんですね(笑)

all of us(Laughter)

chestnut field大丈夫、オレもそんなに聴いてないから(笑)

the recently departed (and buried or cremated, etc.)このアレステッド・ディベロップメントのものは友人からいただいたもの。このシャーデーのものは大分着込んでボロボロだけど、ずっと手放せずにいて。ブランド始めた当時、ブランドコンセプトみたいなものを考えるにあたって、シャデーのアルバム曲「Bullet Proof Soul」をコンセプトの最後の文言に引用させてもらったほど、勝手にゆかりのあるアーティストなんです。

section (of an orange, etc.)大体どれくらいするものなの?

chestnut fieldスヌープのものは2~3万円くらいで出した記憶があるけど、アメリカの方がもっと高いと思います。

section (of an orange, etc.)マジで…。スゴイことになってるんだね。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)僕は値上がりする大分前に安く手に入れてますが、このシャーデーもいまのアメリカだったら500ドルは下らないと思いますね。

「Gジャンはある程度揃えることができたので、次はちょい丈長めのカバーオールかなと」

60’s Hercules&Oshkosh Coveralls

the recently departed (and buried or cremated, etc.)3つめはワッペンだらけのカバーオール。ボディは60年代頃の〈ヘラクレス〉だったり、〈オシュコシュ〉だったりするんですけど、ワッペン自体は70年代のものが中心。まあ、決め手は完全にワッペンでしたが。

section (of an orange, etc.)そもそもこれは何を意味するジャケットなんだろうね? そんなに大量にあるワケじゃないけど、たまに見かけるじゃない?

chestnut fieldワッペンもほぼ鉄道関係会社のものなんで、鉄道関係者、もしくは鉄道もののコレクターが持っていたものだとは思うんですが、これを着て作業したってワケではないのかなと。

Fujiwara:そう。出てくる際はほぼデッドストック状態なんで、日常的に使っていたものではなさそうですよね。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)まあ、僕自身もじつは何度か見かけてはいたけど、当初はそれほど気にはなってなくて。ただ、Gジャンはある程度揃えることができたので、次はちょい丈長めのカバーオールが気になり出したと。今回もそうだけど、こうやって大量にワッペンが付いてると、ディーラーは大抵「ワッペン1枚、云ドルで計算したら、絶対お得だから」って言い出すよね。

chestnut fieldあるあるですね(笑)。逆にワッペンは欲しいけど、ボディがどうしようもない場合も僕はワッペン代で換算してますね。

section (of an orange, etc.)出てくるとしたら60年代とかが多いの?

Fujiwara:そうですね。「91-J」とか〈リー〉のイメージが強いかも。50年代だとカバーオールよりもエンジニアジャケットが多い印象ですね。

chestnut fieldこの〈オシュコシュ〉もやっぱり鉄道系のワッペンとデッドストックに近いコンディションなんで、おそらく鉄道関係のイベントに着て行ったりしたものなんだと思いますね。

section (of an orange, etc.)ようは向こうの鉄道マニア用ってこと?

chestnut fieldおそらく。もしかしたらイベントごとにワッペンを買い足して、徐々に増やして付けていくようなものだったのかも。

section (of an orange, etc.)なるほどね。でも最近の日本の市場だと、前にも(スピンオフ企画を参照)裕くんが話していたように、同じボディならワッペンがない方の人気が高いのかな。

chestnut fieldでも、それは日本の古着マーケットだからであって。例えば軍モノでも海外だとパッチひとつで数百ドルから1000ドルを超えるようなものも少なくないですが、僕らのマーケットにはそこまでの文化はないですよね。あくまでファッション的な評価が強いというか。

Fujiwara:資料的価値は当然一般的なパッチなしのものより高いワケですし、古着関係者として、安くは付けたくない。ただ、売れるかどうかはまた別の話ですね。

「トップボタンがハトメ+ムービングボタンは完全に初見だった」

20’s Carhartt Heart Button Coveralls

the recently departed (and buried or cremated, etc.)カバーオール繋がりで最後は〈カーハート〉のヴィンテージを。

section (of an orange, etc.)これはスゴイね。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)裕くんと一緒にヴィンテージの501XXの本を執筆している水戸の「スマイリー」の川又君に見てもらったら、トップボタンが打ち込みじゃなく、さらにポケットフラップもなく、アームの補強にリベットを使っている点から考えるに、おそらく彼が知る限りハート型のチェンジボタンの付く最も古い〈カーハート〉のカバーオールなんじゃないかと。

section (of an orange, etc.)けど、このタグはカナダメイドという説もあるじゃない? マスタークロスって表記があるものはカナダだって。

the recently departed (and buried or cremated, etc.)一般的にはそう言われていますけど、詳しい方からお話を聞く限り、じつはカナダメイドだけにこのタグが使われていたワケではないみたいで。マスタークロスって言うぐらいですから、おそらくハイエンド版で、同時期にハイエンド版とマスタークロス仕様じゃない廉価版が存在していたんじゃないかと。

section (of an orange, etc.)I see.

the recently departed (and buried or cremated, etc.)ちょっと色落ちが特殊だったので調べてみたら、この個体に関しては左綾なんですよ。襟も直線的ですし、何より先ほど言ったようにトップボタンが打ち込みじゃなく、ハトメ+ムービングボタンの個体は完全に初見だったので。おそらく20年代頃のものじゃないかと。

Fujiwara:いや、もっと古い可能性もありますね。トップがムービングボタンではなく、チンスト+チェンジボタンって仕様もあるみたいですが、そちらの方が古いかと聞かれたら、またそこは微妙なラインで。

section (of an orange, etc.)裕くんならいくら付ける?

Fujiwara:状態にもよりますけど、同仕様でワンウォッシュくらいの状態であれば、300万円くらいは付けるかも。

section (of an orange, etc.)マジで(笑)。カバーオール自体は最近お店でも結構動いてるの?

Fujiwara:36とか小さめなサイズを狙い打ちで買われていくお客さんも中にはいますけど、じつはまだそんなに人気が戻ってきた感じはしてないですね。

section (of an orange, etc.)そうなんだ。まだ小さめのサイズがイイって人もいるんだね。

Fujiwara:ずっと探し続けている人はジャストが気になるんじゃないですかね。実際、20~40年代頃の資料を見ても、当時のアメリカの労働者が皆大柄だったワケでもなく、いまの日本人の体型と対して差がないじゃないですか。ということは、36とか38ぐらいのサイズ感が一般的だったにも関わらず、古着市場では40オーバーばかりという現状から察するに、ゴールデンサイズで状態の良い個体がもうあまり残っていない、つまりは珍しいし、需要も高いってことになりますよね。

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