希少な欧州ヴィンテージを探すなら奥渋谷のこちら。
東急文化村から代々木八幡へと向かう路地の一角、通称「奥渋谷」に位置する「ブラケット」の見どころは、何と言っても英国をはじめとする欧州ミリタリー&ワーク。ちょうど7~8月にかけてイギリスとドイツでバイイングしてきたばかりとあって、普段から通い詰める中島さんもいち早く物色しようと臨戦態勢でした。
もともと中目黒の名店「ジャンティーク」に10年間勤務していたオーナー飯田さんが独立とともに2016年にオープン。アメリカ、ヨーロッパともにワークやミリタリーといった無骨なガーメントを中心にセレクトし、アパレル関係の顧客も少なくないとか。いわゆるレギュラー古着ではなく、あくまでヴィンテージにこだわるなら必ず押さえておきたい注目店のひとつです。
ユーロヴィンテージの中でも人気のモーターサイクルコートも何着か見受けられました。
ヨーロッパ各国の軍モノが豊富な「ブラケット」。中島さんも早速軍パンを物色。
ここ数年、古着好きの間で話題を集めている英国やドイツ、フランスといったヨーロッパのヴィンテージ。「特に〈バーバリー〉や〈アクアスキュータム〉のトレンチやステンカラーが火付け役だったようですが、個人的にはミリタリーやワークなど未見のアイテムが気になります」とは中島さん。
とにかく程度の良い古着がところ狭しと並ぶ店内。奥のラックにはヨーロッパ買い付けのシャツが並びます。
ドイツ軍やイギリス軍といったトレーナーシューズ。デッドストックからミントコンディションで揃えます。
店内はアンティーク小物も充実。特に気になった卓上カレンダー、仕事場のデスクに置きたいとは編集者談。
「アメリカ古着はすでに語り尽くされていますし、たとえレアものとはいえ、未見まではいかないものが大半です。一方でヨーロッパ古着には、ヴィンテージからレギュラーまでまだ新鮮なものがたくさんある」と中島さんも言うように、印刷用語でカッコを意味するブラケットという店名には、「名前を意識せず、素直に良いと思ったものだけをセレクトしていきたい」という飯田さんの思いが詰まっているんだとか。その言葉通り各国の現行ミリタリートレーナーはじめ、戦前のフレンチワーク、さらにはデニムやワンナップシャツといったアメリカ古着、ピンズやスーベニアといった小物まで、多岐にわたるセレクトが印象的でした。
無造作に掛けられた色とりどりのサスペンダーも、味わい深い店内の中だと画になるんです。
ベンタイルのパンツを見ながら飯田さんと話し込む中島さん。「パンツはあまり見かけませんね」。果たしてミリタリー物か?
「絶対的な価値基準がまだ定まっていないものが、やっぱり個人的にも面白いと思ってしまうんです」と、最後にオーナー飯田さんは自身の審美眼を客観的に語ってくれました。
「ここ何回かはヨーロッパ買い付けが続いているので、自然とセレクトもヨーロッパものが中心ですが、今後はまたアメリカ古着にも力を入れていきたいと考えています。一人でやっているため、バイイング期間はお店を閉めていますのでお越しになる際はウェブサイトをチェックしてください」。さらに進化する「ブラケット」の今後の動向にも注目です。
ウール×ブラウンダックのリバーシブル。
アメリカで買い付けたというオーバーポンチョは、チェックウールとブラウンダックのリバーシブル。メンズでフードなしのスタンドカラーは珍しい。「タグがないのでブランドはわかりませんが、ジップなどから推測するに’70年代頃のものかと。ポンチョのようにクセのあるアイテムには目がないです(笑)」
ジャケットはまだしもパンツは珍しいのでは。
英国ランカシャー州に拠点を置くファブリックメーカー〈タルボットウィービング〉社が1930年代に軍用防水綿として開発し、今では英国を代表する素材のひとつとなったベンタイルコットンを使用。「ジャケットはよく目にしますが、パンツは本当に珍しい。ジップは英国ミリタリーならではオプティを採用しています」
ブート品みたいな本物。
70年代にアメリカの〈WLゴア&アソシエイツ〉社が開発した元祖防水透湿性素材ゴアテックスを使用した大型ダッフルバッグは、以前のアメリカ買い付けでデッドストックでいくつか確保したとか。「大きなタグで素材を高らかに謳う感じが逆にブート品みたいで面白い。雨が降る日のリースにイイかも」
営業時間は深夜0時まで。仕事帰りにじっくり物色したい。
京王井の頭線・池ノ上駅から徒歩10分ほど。淡島通り沿いにあるバス停の目の前にひっそり佇む、その名も「ハグレ」。以前はメンズ、レディースともに扱っていたが1年前からレディースを他店舗に集約し、こちらは現在メンズのみの展開。深夜0時まで営業しているため、中島さんも仕事帰りにふらりと立ち寄るとか。
2007年のオープンから一貫して買い付けは年4回。特に年代やブランドなどにこだわることなく、オーナーの花田さんがその時々で面白いと感じたものをセレクトしているという。アウトドアやワークなど往年のヴィンテージに加え、〈セモー(semoh)〉や〈ソラリス ハットメイカーズ(SOLARIS HATMAKER&Co.)〉など現行ドメスティックも展開中。
店内入ってすぐのラックには打ち出し中のフランネル生地のガウンが。
「この素材はレザーかな?」。早速気になるものを発見した中島さん。
「確か10年ほど前、夜遅くにクルマで帰宅中に見つけました。周りにショップがあるような場所でもないのに、そのクオリティの高さに驚いたのを覚えています。それから数年後に『フイナム』の企画でもお邪魔したことがあるのですが、その頃と比べてもさらにレイアウトがスッキリした印象ですね」と、中島さんも語るように、かつては深夜2時までオープンしていた〈ハグレ〉。
良質な古着がすっきりと陳列された店内。壁には〈パタゴニア〉のスーパーアルパインも!
奥に見えるのは不動の人気を誇る〈ブラウンズ〉のビーチベスト。
大胆にカットオフされたリバースウィーブ。これも古着ならではの面白さ。
あえて激戦区から距離を置いているとはいえ、オーナー花田さんの知識と感性は有名店のそれに勝るとも劣りません。加えて特筆したいのが、どのアイテムもコンディションが抜群に良いという点。大戦中のフライトジャケットやパタゴニア黄金期のシェルやフリースなどの定番どころから、一風変わった変化球までセレクトもユニーク。デッドストックのブラックデニムにプリーツを加え、今の気分に昇華したオリジナルのリメイクモデルなど、古着以外のアイテムも見逃せないんです。
インダストリアルな店内の天井に取り付けられたスピーカー。こういったものの一つひとつにもセンスが感じられます。
遅い時間までやっているので帰宅がてら普段からよく覗きに来るという中島さん。花田さんとは下北沢にできたレディースの店の情報を。
何度かリニューアルを重ねつつもカウンター上のレトロフューチャーなサウンドシステムと、まさに大人の隠れ家といったお忍び感は今なお健在でした。
「古着は特定の年代やブランドに執着せず、常にマイペースにいま面白いと思うものだけをセレクトしています。深夜0時までオープンしていますので、ちょっとだけ変わった立地にありますが、お仕事の帰りにでも覗いてみてください」とはオーナーの花田さん。わざわざ足を運ぶ価値は大いにアリの店です。
オーダーメイド時代のハンティングベスト。
かなり重厚なブラウンダックで設えた20世紀初頭頃のワークベスト。「背面にゲームポケットがあるのでハンティングとも考えられますが、表身頃にはロッドやネットを固定するレザーのループが確認できるのでフィッシングの可能性もあるのかな。どちらにせよ既成品ではなく、オーダー品だと思われます」
僕のルーツにして常に気になるブランド。
00年代 ポロ ラルフローレン ¥18,000+TAX
ディアスキンのように柔らかな肌触りが心地良いヌバック素材を採用したミドル丈のスポーツジャケットは名門ラルフローレンから。「昔から何かいいなって思って手に取ってみるとラルフローレンってことが多々あって。結局の自分のルーツや好みはここに集約されているのかもしれません」
ナチス軍の迷彩を映画の衣装で再現。
プルオーバーのスプリンタースモックは欧州らしいディテールワーク。「一見するとナチス軍のレインカモパターンなんですが、2014年に公開された映画『フューリー』の撮影で使われたコスチュームみたいです。スルーポケット仕様なので雨の日用のオーバースモックを再現したものかと」
レギュラーとヴィンテージをフラットに構成。
吉祥寺を代表するランドマーク〈LLビーン〉の隣に昨年オープンした新店舗ながら、実は吉祥寺ではお馴染みのヴィンテージショップが移転リニューアルしたもの。「吉祥寺自体が久しぶり」という中島さんは、もちろん初めて訪れるとあって興味津々のご様子でした。
もともと同じく南口に位置した2フロア構成のヴィンテージショップが昨年10月に移転リニューアル。メンズとレディースの割合は以前と同様にちょうど半分ほど。母体が卸事業も展開しているとあって、その守備範囲はあまりに広大。お宝級ヴィンテージからレギュラーまでを当価値で並列する感覚はさながらセレクトショップを思わせます。
まずは中央のテーブルからチェック。広々した店内なので、ゆっくりと買い物が楽しめます。
テーブルの隣にある棚には小物を陳列。NASAのキャップとバンダナが特に気になる。
2014年に実店舗をオープンする以前から同じ屋号で古着の卸事業を長年展開していたという〈ドラセナ〉は、近年古着屋が乱立する吉祥寺きっての有力店。その店名は幸福の木の学名に由来しているとか。
店内の奥にあるメンズフロア。流行りの90年代物から王道ヴィンテージまで、バランスよくセレクト。
トルソーが着ているのはモンキーズのバンドTシャツ。アメコミ風のイラストがかわいい!
白を基調としたクリーンな店内。余裕を持ってハンギングされているので服が見やすいのも嬉しい。
以前はレディースとメンズをフロアごとに分けていたものの「最近は性別に関係なく全商品を見ていかれるお客様やカップルも多いので」とオーナー鈴木さんも語るように、ワンフロアに全アイテムを集中させた構成となっています。「まず空間自体が広くて見やすい(笑)。僕ら世代が見ればレギュラーでも若い世代にとってはたとえ90sでもれっきとしたヴィンテージなワケですし、年代や性別を無視してフラットに見られる面白みがありますね。それにヴィンテージ然とした古着屋にはない変わり種も少なくない」とは中島さん。
チェーンに吊るされた古着たち。壁一面のディスプレイって、見ているだけでも楽しいですよね。
オーナーの鈴木さんと談笑中の中島さん。「ドラセナ」はほかにも、系列店「リトルブラザーズ」が近所にあるとか。
10名ほどのバイヤーがアメリカやカナダに常駐しているため、商品回転も極めてスピーディ。50年代以前のヴィンテージデニムから90年代以降のアドバタイジングやデイリーアパレルまで、良い意味で落差のあるラインナップが最たる魅力と言えそうです。
「吉祥寺という土地柄からか上は60代から下は10代まで客層も幅広く、トレンドを加味しながらもそれぞれのご期待に添えるようセレクトしています。リクエストがあればネット通販のアイテムを実店舗に移動し、ご試着をすることも可能ですので何でもご相談いただければと思います」
名門同士が共演した贅沢パッチワーク。
80年代 スペシャル ハンドメイド アニータ ¥30,000+TAX
リーバイスやリーのデニムをパッチワークしたリメイクコートは、手作りだからこそできる贅沢な共演。「ベースに使われたデニムはそれぞれ70~80年代のものなので、少なくとも同年代かそれ以降に作られたものと推測できます。いかにもハンドメイドながらタグがあるので販売していたんでしょうね」
恣意的ではないリアルなドリップ。
カンザス州チェトパにて名門リーが50年代に開発したチェトパツイル採用のワークシャツには、リアルなペンキドリップが。ここまでくるとあえてのタイドアップが面白いかも。「作り物じゃないのが一目でわかる(笑)。当時のペインターかガレージワークで使われていたものなんでしょうね」
ハーフジップがいままた新鮮。
1977年に設立されたカナダのアウトドアアパレルブランドから、サイドジップの備えたプルオーバーブルゾン。「このタイプのブルゾンでフルジップやクルーネックは見かけるけど、ハーフジップは珍しいかも。ピーチスキンぽい素材感も好み。ややオーバーフィッティングで使いたいですね」
各国ミリタリーギアで新たなライフスタイル提案。
オーナー加瀬さんとは旧知の仲という中島さんが最後に向かったのは、中目黒駅東口から徒歩5分ほどの路地に位置する古着好きにはお馴染みの名店〈ハレル〉。こちらではやはり各国ミリタリーの珍品がお目当てとか。その独自の審美眼には絶対的な信頼を置いているとも語っていました。
カジュアルとハイエンド、新品とセカンドハンズといった異なる2つの要素や思考をあえて当価値で扱うことで、新たな出会いを提供したいという思いから2013年にオープン。「Dual Thinking」なるコンセプトのもと、新旧のミリタリーガーメンツを中心に、アパレルから雑貨まで幅広く展開する話題のライフスタイルショップ。
まずはレジ周りの小物をチェック。ミリタリー物はもちろん、〈ティファニー〉のアクセやカレッジリングなどが並ぶ。
ミリタリー雑貨やウェアと一緒に陳列されたシューズの品揃えも「ハレル」のウリのひとつ。よく見るとヴィンテージ・アディダスが!
長年古着業界に身を置いてきたオーナー加瀬さんが、自身のショップをスタートするにあたり主軸としたのは各国のミリタリーでした。「今となってはジャンルを問わず多くのブランドからミリタリーモチーフなものがリリースされていますが、僕が集め始めた頃にはまだそれほど充実していませんでしたし、僕自身もなるべくなら目的を持ってデザインされたオリジナルを扱いたいと考えていたのです」という。
ラックにぎっしりと掛けられたミリタリー物の数々。「ハレル」の店内はまるでミリタリーサープラスのよう。
近年安定した人気を誇るA-1ジャケット。その横にあるリュックはチェアにもなる優れもの。
天井にはヴィンテージデニムも。至るところに商品が飾られているので、隅々まで見て回りましょう。
「ただ単にミリタリーガーメンツに強い古着屋ではなく、あくまでミリタリーをベースとした新しいかたちのライフスタイルを提案してくれる、そんな印象ですね」と中島さんも語るように、近年乱立するライフスタイルショップの先駆けでもあるハレルでは、フライトジャケットやBDUなどのアパレルのみならず、カトラリーやコッヘルなど生活に根差した道具までも本物のミルスペックで揃えることができる。
アメリカのアンティーク雑貨が並んだレジ前のコーナー。童心にかえってついつい見入っちゃいます。
旧知の仲だというオーナーの加瀬さんと中島さん。最近のミリタリー物事情をリサーチ中。
また、一品ずつ懇切丁寧に綴られたオフィシャルブログからも加瀬さんの豊富な知識とミリタリー愛を確認できるの是非ともチェックしていただきたい。
「ミリタリーのように流行り廃りに左右されない本質的なデザインがやっぱり自分の得意とするところであり、ハレルの原点でもあると考えています。オープン当初と比べるとアパレルが増えてはいますが、いま一度原点に立ち返ってグッズや道具類の充実も図っていきたいですね」
手縫いのリペアが愛らしい。
第二次大戦中にベリーヘビーゾーン用に開発されたUSエアフォースのフライトジャケット「B-9」をベースにしたと思われるシビリアンモデル。「大手量販店JCペニーのオリジナル。袖口に施された素朴なリペアが可愛い。オリジナルは高嶺の花ですが、民生品なら価格もお手頃です」
ポケットのパイピングに注目。
カナダはのレザーブランド、クラフトスポーツLTD.社のオリジナルレーベルから、上質なホースハイドレザーを採用したシングルジャケット。「フランネルライナーやネイビーの玉縁ポケットなど、同時代のアメリカ製レザージャケットには見られないモダンな意匠に惹かれました」
ガーデニングやキャンプでも重宝しそう。
米軍内の建築作業員向けに作れたワーカーズエプロンは2007年製のデッドストック。樹脂コーティングが施され、撥水性に優れているのでアウトドアにも最適です。「作りがコンパクトで取り回しも良さそうですし、ポケットも多いので僕ならキャンプで使いたいかな」
Houyhnhnm's
store.houyhnhnm.com
今回お邪魔した4つの有力店が参加する、ECのアンティークモール「フイナムズ(Houyhnhm’s)」。このほかにも個性豊かな古着店が軒を連ね、日々面白いアイテムがアップされています。興味のある方は是非、こちらもチェックを!