Artist Ryuji Kamiyama talks about his past and future.
先日リニューアルを果たした中目黒のショップ「ブリック&モルタル(BRICK&MORTAR)」にて、アーティストである神山隆二さんと村上 周さんによる二人展「SHUT UP AND DRINK」が12月26日まで開催中。大きな有田焼きの壺をキャンバスに、ふたりの表現をレイヤードしています。今回はその首謀者のひとりである神山隆二さんにインタビュー。キャンバス、服、陶器などなど、素材を選ばず縦横無尽に表現を乗せる神山さんに、自身の原点から現在に至るまでの活動を振り返ってもらいつつ、最新作が展示されている今回の二人展に関する話題も語ってもらいました。
mountain where there are gods当時はみんなやっていたんです。もともとジョニオくんに会ったのは、原宿のラフォーレだったかな。友達づたいで〈MILK〉のデザイナーの大川ひとみさんを紹介してもらって、そのままラフォーレに行ったらそこにジョニオくんがいて。当時まだ文化卒業したての頃だったと思います。まぁその流れでジョニオくんの家に遊びにいくのが日課になったっていう(笑)。
mountain where there are godsそう、名刺みたいなもんなのかな。そういうのがあると誰かと仲良くなれたり、クラブやバーでタダ酒飲めたりしたから(笑)。
デザイナーという意識は当時あったんですか?
mountain where there are godsそれが小っ恥ずかしくて(笑)。一応肩書きとしてデザイナーというのはあったんだけど、それってどうなんだろう? っていう疑問はずっと持っていました。ものをデザインするのがデザイナーなんだろうけど、ファッションデザイナーって改めて自分からいうのは恥ずかしい。
mountain where there are gods完全に無意識でしたね。遊びの延長が仕事になって、会社をつくって社員も増えたりはしたんだけど、ぼく自身、本質はなにも変わってなかったように思います。原宿は小さい頃からの遊び場だったし、あそこへ行くと何かがあるっていうのはずっと感じ続けていたというのもありますね。
mountain where there are godsもうあの瞬間は二度と訪れないだろうなって。当時たまたま原宿でファッションが盛り上がって、それぞれのカルチャーを通過した人たちがひとつの場所に集まるっていうのはもうないですよね。いまはどの分野もそういったエネルギーのようなものが薄まっちゃっているから。ぼくらは無いものの中から生まれたから、その差は大きいですよね。
10年間〈フェイマス〉として活動を続けて、急に辞められたのはどうしてなんですか?
mountain where there are godsちょっとした大人の事情なんですが、自分たちが借りていた物件が大家さんの都合でなくなることになっちゃって、続行するにはお金がすごくかかるという話で。裏原のムーブメントは続いていたし、お金を工面することも可能ではあったんだけど、そのタイミングで自分が冷静になっちゃったんです。
いつまでも勢いに乗ったまま続けられないといことですか?
mountain where there are godsその当時でぼくは29とか30歳くらいで、社員を引っ張ってまで続けることができるのか? って。大人になった瞬間だったのかもしれませんね。まぁ10年っていう区切りもあったし、一度ファッションから抜け出したいという気持ちもあったんです。それでやり残したことをしたいなぁって。
やり残したこと?
mountain where there are godsあんまり原宿の外に出てなかった気がして。もちろん仕事の延長で海外に行ったりはしてたんだけど、あくまでフェイマスとして行っていたから。もっと自由な視点が欲しいというのが当時ありました。純粋に自分が楽しいと思うことを追求するために。
mountain where there are gods自分を変えることで物事にも変化が訪れるし、新しい出会いが増えたのはうれしかったですね。いま40代になってすごい新鮮な時期が訪れていて、取引するメーカーさんとの若い担当の方たちが〈フェイマス〉を知らなかったりするんです。そういう人たちは純粋にぼくの絵を見て声をかけてくれているから。あとから「神山さんって裏原出身だったんですね?」なんて言われるのが楽しかったりしますね(笑)。
歌舞伎町の景色が印象的でいまでも頭のなかに残っている。
そもそも神山さんの作品はどんなものから影響を受けているんですか?
mountain where there are godsぼくが絵に関心を持ったのは小学生の頃で、ちょっと年の離れた兄の影響もあるんですけど、部屋に『宝島』とか『アキラ』の漫画が転がっていたりして、まぁませてたんですよ(笑)。勉強するのは大嫌いだったけど、絵を描くのは好きでした。美術の教科書の最初のページに「ゲルニカ」が描かれていて、それを見て衝撃を受けて。その感覚はいまでも残ってますね。
どんなことを思ったんですか?
mountain where there are godsなんだこれ! っていう(笑)。当時はそれが描かれた背景とかも全然知らないんだけど、色のない世界なのにすごい自由というか。これを描いた人はどんな人なんだろう? って思ったのを覚えてます。それで自分も絵を描きたいなって。
もう小学生の頃からそう思ってたんですね。
mountain where there are godsあと、うちはおばあちゃんが四谷に住んでて、毎週新宿のコマ劇場の前で待ち合わせて遊びに行ってたんです。美味しいもの食べさせてくれたし、必ず映画を見せてくれて。それで一緒に歌舞伎町を通るんだけど、歩いていると恐い人たちとか目に入るでしょう? 当時は上半身裸で腰にサラシ巻いたりした、いかにもな人たちがたくさんいて(笑)。ネオンを含めてその光景がすごい印象的で、子供ながらにかっこいいなぁなんて思ってましたね。
好奇心を掻き立てられたというか。
mountain where there are godsそうそう。ぼくが蛍光色を好きなのもその影響だと思います。
mountain where there are gods昔のイベントのフライヤーって基本モノクロだったりしたじゃないですか。みんなお金なくてコピーしてつくってたから。海外だとよく蛍光紙にプリントされてたりして、そういうものに黒を足していく感じがぼくは好きでした。作品としてモノクロのものも描いていたりはしたんですけど、そこに要素を足していくようなことを最初はやっていて。それで足しすぎると飽きてくるから、こんどは抜いてみたりとか。結局それの繰り返しなんです。
自分が飽きないようにいろんな手法を試していたと。
mountain where there are godsそうですね。あとは道具。プリントもやるんだけど、あれって色を作る作業や洗いなど時間含め、意外とめんどくさいんです(笑)。ここ最近はスプレーにハマってますね。要素として使うことはあったんですけど、これ一本で完結できることに気づいて。去年くらいからスプレーの作品で展覧会をするようになりましたね。
mountain where there are godsそうですね。キャンバス一枚と一緒で、これにもできるなって。
そもそも〈ブランクス〉をはじめたのも陶器との出会いからなんですか?
mountain where there are gods大量にあるB品の陶器と出会ったのがきっかけです。量産されたものもダメなやつはほぼほぼ処分されるって聞いたから、それだったらそこに新しい価値を与えて復活させるのもありかなって。服はいくらでもあるし、リメイクはこれまでにもやってきたしいつでもできると思っていたので。
mountain where there are gods石川さんも鵜飼くんもそうだけど、あんなに自由な人はいないですよ(笑)。ウルトラヘビーはすごくいい意味で中和されているというか、そもそも仕事として解釈してないですね。あの自由なスペースで表現できるっていうのはありがたいですし、毎回楽しい。自分たちですら何をやっているのかわかってないので(笑)。
みなさんのフットワークの軽さがすごいなと。
mountain where there are godsぼくは今年47になるんですけど、石川さんは10個くらい離れているのかな? 先輩がああやって自由に動いていると、自分もまだまだだなって思いますからね(笑)。一緒にいると本当に楽しいんです。
題材を選ばずに描くのはやっぱり楽しい。
現在中目黒にある「ブリック&モルタル」では神山さんと、アーティストの村上周(あまね)さんによる二人展「SHUT UP AND DRINK」が開催されています。大きな有田焼の壺をキャンバスにした展示ですが、これはどのようにしてスタートしたんですか?
mountain where there are gods周から「一緒になにかやりませんか?」っていう相談をずっと受けていて、彼のお店でずっと陶器を置いているのが頭にあったので、それで今回壺をリクエストしたんです。やるならとにかくデカイやつで!
って(笑)。そしたら有田焼を探してくれて、先月から有田に入って制作をはじめました。絶対現場に入ってやりたかったから。
それはどうしてなんですか?
mountain where there are gods相手の環境でやれるっていうのがおもしろいんです。現場に行けば必ず道具とかもありますし。〈ブランクス〉で陶器は扱ったことがあったんですけど、今回は全部素焼きの壺で、それははじめてでした。
道具はどんなものを使ったんですか?
mountain where there are gods今回はスプレーも使ったんですけど、半分以上は筆でした。今年の1月にパリへ行ったときにホームセンターで筆を2本買ってて、それを試したいなぁということで。普通の太い丸筆でペンキ用のやつだったんですけど、有田焼とすごい相性がよかったですね。
mountain where there are godsはじめてのものはやっぱり上がりますよね。とくに今回は立体だから面で見れないし、全部曲線なので。回しながらだったり、いろんな角度から眺めてイメージを膨らませてやりました。それがすごい楽しかった。有田焼の壺ってもともと献上品で、ほとんど市販されてないみたいなんです。売られたとしても500万近くするらしくて(笑)。
よくそんなものが見つかりましたね。
mountain where there are godsどこかに贈る予定のものが中止になって余ってたみたいですね。現場のおっちゃんも邪魔なんだよって話してて、今回描いたやつ以外にもまだ20個くらい余ってるらしいから、それ全部買おうかなと思ってます。
不要なものに価値を与えるという〈ブランクス〉の活動にも通じますね。
mountain where there are godsなんでも描いたり重ねたりすればアートになるから。題材を選ばずに描くのはやっぱり楽しいですね。このアトリエでも壁に試し書きしてから作品つくったりするんですけど、この壁をそのまま欲しいっていう人もいるし、わからないもんですね(笑)。
やっぱり自分の手の届くところでやりたい。
これまでの活動を振り返って、ご自身のなかで変わったこと、逆に変わらなかったことはありますか?
mountain where there are godsとくにないですね。なにも変わってないと思う。
mountain where there are gods意識しているとまではいかないですが、どこか頭は働いているでしょうね。もともとひとりでスタートして、会社化してスタッフが入ったとしても、やっぱり自分の手の届くところでやりたいというのはあったので。
時代も意識したりはしないですか?
mountain where there are gods全然しませんね(笑)。そんなこと考えてたらまずここ(世田谷)にいないと思うし。ここでの生活がラクでしょうがないです。
最後に、ご自身の活動を続けていくなかで今後やってみたいことなどがあれば教えてください。
mountain where there are godsずっと壺に描いてみたくて今回それが実現したし、まだストックがあるということなので今後もそれは継続すると思います。あとは友達にガラスを吹いている人がいるので、そこに泊まりに行ったりしてガラスがつくられる工程を見に行ったりしたんですけど、いつかガラスにも挑戦したいなって思ってます。