今や定着したアーバンアウトドアという価値観とスタイルをいち早く打ち出し、高機能マテリアルを日常のベーシックウェアへと落とし込んだ先駆者である「ナナミカ(nanamica)」。〈ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)〉とのコラボラインである〈ザ・ノース・フェイス パープルレーベル(THE NORTH FACE Purple Label)=以下、パープルレーベル〉はすでに人気のブランドだが、ショップオリジナルのハウスブランドの〈ナナミカ〉もすこぶる評判がいい。その快進撃の航跡と現在地、そして行く先の羅針盤はどこを指しているのか? “船長”として舵を取る、本間永一郎さんに伺います。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)キーワードは、スポーツ&ユーティリティー。日々を楽しく快適に、格好良く暮らすためのアイテムを提案しようと、カジュアルやスポーツウェア、そしてインポートの分野でキャリアを積んだ仲間のユニットです。一過性で終わることのない、いつまでも持っていたいモノ作りを目指しています。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)学生時代は趣味でサーフィン、卒業とともに入社した「ゴールドウイン」では18年間にわたってマリンウェアの〈ヘリーハンセン〉を手掛けてきました。一緒に「ナナミカ」を立ち上げたディレクターの今木も海が大好き。なので、海に紐づく名前にしようと考え、国境や思想を飛び越えて人々とつながり、世界に発信したい思いを込めました。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)長年〈ヘリーハンセン〉に携わった後、’01年からは「ゴールドウイン」が持つスポーツウェアのノウハウを活かし、アパレル企業と一緒にブランドを作る新規プロジェクトを担当しました。そうして商品企画や営業をしていると、セレクトショップなどから「〈ザ・ノース・フェイス〉に別注をしたい」とあちこちから頼まれるんです。ただ本気のアウトドアメーカーなので、当然ながらファッション向けの別注は一切受けていませんでした。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)その頃〈ザ・ノース・フェイス〉の商品企画やブランディングを担当していたのは、僕と同期入社で、一番の仲のいいヤツでした。現在では「ゴールドウイン」の副社長ですが、彼とは同じ部署で、ずっとサイド バイ サイドでやってきた間柄だったので、互いに相手のセンスや能力を理解していました。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)ハウスブランドは、ショップを構えてから少しずつ企画していきました。お店に必要なアイテムだけど、既存のブランドに別注するのも違う、そうした考えから作るようになりましたね。だからブランドという集合体ではなく、あくまでラインナップの隙間を埋める単品での提案でした。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)端的に言うなら〈パープルレーベル〉はアウトドアライクなデザインで、〈ナナミカ〉はマリンやアイビーの雰囲気。例えば、双方に同じファブリックを使用する場合でも、前者ではフィールドタイプのジャケット、後者ではスタジャンに落とし込むといった具合ですね。そういった違いが出るよう意識していますが、同じメンバーが同じ台所で作っているので、どちらもウチのアイテムであることに変わりありません。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)〈パープルレーベル〉はタウンユース向けではありますが、それでも〈ザ・ノース・フェイス〉の名のもとでは提案できないアイテムもある。なので、自分たちの自由なクリエーションの場として、本格的に〈ナナミカ〉のブランド化を進めるようになったのが’07年。この頃から直営店だけでなく、ほかのセレクトショップでも取り扱っていただくことを意識するようになりました。すると、すでに注目されていた〈パープルレーベル〉を手掛けているブランドとして知られるようなりました。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)そうですね。日本では〈パープルレーベル〉の存在感があまりに大きく、そこまで目を向けてもらえない時期が長かった。それが海外のショップに置かれるようになってからは、国内での取り扱いも増えましたね。
いわば、逆輸入のような?
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)最近の若い世代はフラットだと思いますが、30~40代以上は欧米信仰が強いので、海外で取り扱っていると見え方が変わることもありますよね。例えば、アジアのブランドがパリで展示会を開くとたくさんオーダーが入るのに、日本では全然受け入れられないこともあるそうです。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)北米やヨーロッパ全域、オーストラリア、アジア、南アフリカなど24カ国で販売されており、シーズンによって多少の変動はあるものの平均して90店ほどで取り扱われています。海外のアカウントは約150店以上になっています。
海外進出に乗り出し、早い段階から支持を得られた理由は何だと思いますか?
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)現在では随分と増えましたが、僕らが海外に出た当初は、ハイレベルな機能素材を採用したデイリーカジュアルは珍しく、そうした手法で目立っているブランドはありませんでした。またすでに当時から、日本人ならではの繊細なモノ作りを武器にして海外で評価されているブランドはありましたが、僕らとはゾーンが違い、ヴィンテージを緻密に再現しながらモダナイズしているところが人気でした。〈ナナミカ〉もデザインのベースはアメリカンクラシックなので、絵で描いたら似たように見えるものの、生地が機能素材だったり、世界観や最終的な落とし込みは異なっていましたね。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)〈パープルレーベル〉はクラシカルなアウトドアウェアの匂いを残したベーシックカジュアル。〈ナナミカ〉はアメリカのオーセンティックやトラッドが基本になっています。対して、ほかのアウトドアブランドが提案しているアイテムは、スポーティだったり、ハイテク感の強いデザインが主流です。イメージもプロダクトも違うので、競合している意識はないですね。
〈ナナミカ〉のアイテムを企画するうえで、特にこだわっていること、心掛けていることはありますか?
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)僕らのなかにあるリアリティは常に大切にしています。ですから、作ったら売れるだろうけど、自分たちが着たくないモノは作らない。あと実際に好調な商品でも、時代が流れるに連れて自分たちのそのときの感覚とズレを感じたり、望んでいない領域に入りそうになったら、あえてラインナップから外すこともあります。それで再び時代や気分が変わってフィットしてきたら、リバイバルさせたり。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)先ほども申し上げたとおり、2003年のスタート当初は「ゴールドウイン」が保有しているブランドにお願いして、「ナナミカ」のカプセルコレクションを作らせていただいたのが始まり。しかし、以降は基本すべて受け身で、相手からのオファーに応えるカタチです。ただし初回のコラボが気に入り、こちらから第2弾をリクエストさせていただくことはあります。
official size of a tatami mat for measuring room size (esp. a Kyoto-size tatami mat)現時点で決まっているのは、今年の秋、NYのソーホーに海外では初となる直営店をオープンします。これまで10年間にわたって世界各国で取り扱っていただいていますが、やはりフルラインナップではないので〈ナナミカ〉の世界観を伝えることは難しかった。でも自分たちの考えを知ってほしいし、もっと見たいというファンもいらっしゃる。商品を含む空間全体を通して、見て、触れて、感じ取れる、お客様に対するショールームのような場所にしたいですね。