ファッションジャーナリストの
ビル・カニングハムが着ていたように…。
今回のカプセルコレクションですが、どんな内容に仕上がったか教えてもらえますか?
Charlie Staunton(以下、Charlie)〈ウィズロム〉は、素材がとにかくいいよね。今回のコラボレーションではツイル素材を使用したんだけど、カジュアルにも、シックにも仕上がったし、これからの暖かい季節にちょうどいいんじゃないかな。トロピカルな感じもいいでしょう。
Shirley Kurata(以下、Shirley)通常の〈ディッキーズ〉は生地が硬いから、人によっては着づらいというひともいる。でもこれは〈ディッキーズ〉のよさも継承しながら、ソフトな生地なので心地よく着ることができるの。
Charlie純粋にワークウエアのひとつであること、またストリートウエアや、スケートボードシーンにおいて欠かせないブランドだからね。今回のコラボレーションは、〈ウィズロム〉や〈ディッキーズ〉にとって新しいアドベンチャーになったのでは?クラブ遊びから、教会での結婚式などのフォーマルな場まで、幅広いシーンで着ることができるデザインになっていると思う。
〈ディッキーズ〉のファンは、この展開をうれしく思っているのではないでしょうか?
Charlie〈ディッキーズ〉は、間違いなくワークウエアブランドのなかでもトップクラスだし、アメリカの工場で働くひとたちはたいてい〈ディッキーズ〉を着ているしね。それと、昔からスケーターたちが好んで履いている。新しいのを2枚買って、1枚はクタクタになるまで履きつぶして、もう1枚はきちんとプレスしてスタイリッシュに履きこなすというスタイルだね。
Shirleyジャケットに関しては、フランスのワークウエアを元にデザインしてる。3つボタンでコートのように着ることができるから素敵でしょ。
Charlie(ファッションジャーナリストの)ビル・カニングハムが着ていたような感じをイメージしたね。
Shirleyパンツにはプリーツが付いてる。私たちはプリーツパンツが大好き!だけど通常〈ディッキーズ〉のパンツにはプリーツがついていないから。昔、ロサンゼルスではオーバーサイズを履くのが主流だったから、それをイメージしてプリーツをつけてゆったり目で履けるようにデザインしてみた。
〈ディッキーズ〉のパンツをサイズ40で履くという、90年代の感じですね。
Shirleyそう。これはプリーツがあってゆったりしているから、わざわざ大きなサイズを買う必要はないでしょ。それと膝部分のポケットは、昔は携帯なんてなかったから付いていなかった。でもいまは、ポケットがあると便利だから足してみたってところ。
Shirleyインンダストリアルな空気感を残しながら、ドレスアップもできる。ワークウエアを基本に、さらに前進させたの。
Charlieアメリカのメカニックジャケットを参考にしたんだ。トレンチコートのように、身幅はワイドにデザインされている。イメージは80年代。ブラックカラーのショップコートなんかは、当時スケーターたちがよく着ていたんだ。
Shirleyはスタイリストですが、このショップコートをどのように着こなしたらいいと思いますか?
Shirleyボタンダウンのシャツに合わせたらドレスアップできるし、Tシャツを着ればカジュアルになるし、それぞれ格好よく着こなすことができる。コラボレーションのシャツは、これも通常の〈ディッキーズ〉のものよりもソフトにできているので、着心地がいい。ユニフォームシャツを元にデザインしているのだけど、ドレスシャツも意識もしてる。
Tシャツのグラフィックに関しては、2人が手掛けたのですか?
Shirleyそう。私たちはハニーとアレキサンダーという2匹のタキシードキャットを飼っているんだけど、彼らをイメージしたファニーなグラフィックにした。雌のハニーの方がシャイで(笑)。
Charlieレターに関しては、私がデザインをしたんだ。KVNMというラジオ曲のネオンを意識してね。昔っぽいレターなんだけど、ネオンポップな感じがいい。かつてはラジオ局が主催するライヴでバンドの名前を紹介する際に、ビルボードにこのスタイルのレターで描いていたんだ。ハンドドローイングなんだけど、デジタル感があって、90年代や初期のコンピューターグラフィックを意識している。このロゴで店のウィンドウにもハンドメイドで描いたしね。
今回のアイテムですが、西海岸のレイドバック感もありながら、非常にモダンな感じもしました。
Charlieたとえば、N.W.A.やビースティー・ボーイズなどの西海岸発のクルーなんかのイメージかもしれない。当時は、みなメインストリームで音楽活動をやっていたし、常にセンスの中心にいたとは思う。だけどどこか抜けた感じがあるというか。N.W.A.なんか、当時はブラックデニムに、ブラックジャケットを着たりして格好よかった。
2人が選んだ『ジャンプ』、80年代の女子プロ雑誌。
ポップアップのイベントで制作をするジンですが、どのような内容になりますか?(※イベントはすでに終了。このインタビューはイベント前に行われた)
Charlie1枚の紙を使ってミニジンを作ろうと思っている。ドローイングしてもいいし、雑誌を切り抜いてコラージュしてもいいし。好き放題やってもらえれば。使う雑誌は下北沢へ行って、古本を購入した。
Shirley私たちは日本語の雑誌が好き。あとはスヌーピーの本ね。私たちはスヌーピーが大好きで、ロサンゼルスの店には、販売していないけどスヌーピーのトイをたくさん置いている。
『ジャンプ』に、80年代の女子プロの雑誌…アジャコング! 人気あったんですよ。さすがのセレクトです(笑)。
Charlie500円だった。雑誌のページを切り取ってコピーをして、それをカット&ペーストして、自分のジンを作るって感じね。
Shirley友達を通じて知り合ったんだよね(笑)。
Charlieローズボールのフリーマーケットで出会ったんだ。そのとき、私はものすごくクラッピー(安い)なアパートメントに住んでいて、そこから彼女と同じアパートメントビルへ移り住んだ。コリアタウンのウィルターンシアターの近くで、シアターと同じ建築をしたアパートメント。それから友達としての付き合いを経て、彼女が家を出てカップルになったんだ。いまはシルバーレイクに住んでいる。
シルバーレイクに店がありますが、どんなエリアなのでしょうか?
Charlieシルバーレイクはアップカミングなインディバンドが多くいるし、まだ安く住める場所も残ってて。いろんな人種がいるし、学生も多い。昔からクラブやライヴハウスが多くあって、レストランやカフェも選び放題。インディペンデントで小さくて素敵な店が多い。モダンな建築物がある一方で、リチャード・ノイトラ、ルドルフ・シンドラーなどの1930年代の建築があったり、フランク・ロイド・ライトのホリーホック・ハウスは中でも有名だよね。シルバーレイク周辺にはミッドセンチュリーモダンの建物も多いんだよ。ちなみにシルバーレイクは、もともとがゲイのひとたちが多く住む地域だった。70年代~80年代はフィリピンのひとたちも多く住んでたね。
Charlie店を始めてから友だちがさらに増えたね。いろいろなひとたちとの出会いはもちろん、そこから交友がはじまったりね。
Shirleyコラボレーションも多く行うようになったし、日本からもたくさんのひとたちが来てくれている。お客さんはすばらしいし、多くの日本人の友だちができたしね。
Shirleyライフスタイル重視なひとが多いと思うけれど、カジュアルなだけでなく、ファッションに興味を持ち始めている感じがする。あとロサンゼルスには、質の高いヴィンテージが揃っているから、ヴィンテージを上手く着こなすひとも多い。フリーマーケットも多いし。
Charlie「ローズボール」が有名だけど、そこに来ているひとびとを観察しているだけでも面白いよ。ヴィンテージのシーンにも変化があって、今は40年代のものよりも、ヴィンテージのストリートウエアが人気なんだ。モトクロスのウエアなんか人気が高い。
今後の「ヴァージル・ノーマル」の予定を教えてください。
Charlieいくつかコラボレーションがこの先も続く予定。私たちは毎日店に立っているんだけど、素晴らしい才能をもった人たちが集まってくるね。ロサンゼルスの中でもコミュニティプレイスとしても成立し始めているから、面白いことをこの先も発信できたらいいなと思っている。