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Translated By DeepL

People are like butterflies attracted to light. These are some of the questions posed by "VERTIGO," the spatial art created by Mirai Moriyama and three other artists.

People are like butterflies attracted to light. These are some of the questions posed by "VERTIGO," the spatial art created by Mirai Moriyama and three other artists.

Early September . Mirai Moriyama , Kaido Sakuma, and Koichiro Iwamoto presented "VERTIGO," a spatial art form consisting of dance, sound, and photography, at the gallery VACANT in Harajuku, Tokyo. . It is a theater, a physical expression, an installation, and a political message. The work transcends the boundaries of artistic expression, and is filled with a combination of beauty and horror that shocks the hearts of people, as well as a proposal for society. This experience, which is difficult to describe in words, is documented here in the form of a report and interviews with the three participants.

  • Photo_Koichiro Iwamoto , Fukuko Iiyama
  • Text_Taiyo Nagashima
  • Edit_Yosuke Ishii

まるで自販機の光に群がる蝶のように、人間も、無意識で行動を規定されることがある。原宿のイベントスペース「VACANT」に集った人々は、階下から鳴り響く森山未來の足音に気づくと、まるで命令されたように壁際に並び、話すことをやめた。コツン、コツン、と階段を登る音はゆっくりと、確固たる意志を持つ。

「VERTIGO」は二部構成。前半は空間にインスタレーションと写真を自由に見学することができる。空間には、写真、台、水の入った杯、本などが設置されている。ひときわ目を引くのは、部屋を中心で分割するように吊り下げられた透明なアクリル板。後半はこの空間とインスタレーションをそのまま用いて、森山によるパフォーマンスが行われる。

観客と演者との間に境はない。誰もが同じ目線の高さで、その表現の一部に組み込まれてゆく。そして森山が姿を現す。

「そこ」「どく」

会場の一角に視線をまっすぐ向けながら彼はそう言った。語りかけるように発したその言葉は、広い空間の隅々まで通る。

「VERTIGO」は、ギリシャ神話に登場する「ナルキッソス」をモチーフに構成されている。水面に反射した自分に恋をして、満たされることなく、いずれ朽ち果てていく神の物語。ナルシシズムの語源となった存在である。以下にステートメントを引用する。

「ナルシシズム(自己陶酔、自己愛)」の語源であるギリシャ神話の美青年「ナルキッソス」と、そのナルキッソスに思いを寄せる妖精の「エーコー」。彼女は肉体を失い、他者の声を繰り返すこと(エコー)のみを許された声だけの存在。ある日、ナルキッソスは水鏡に映る自分の姿に恋をし、自分だと気付かぬまま愛の言葉をかけ続け、その言葉はエーコーによってあたかも水面に映る彼自身が返答しているかのように虚しく響き渡ります。そんな問答の末、ナルキッソスはその場から離れられなくなり、満たされない思いにやつれ果てて身を滅ぼしてしまいます。

空間の中央にぶらさがる透明なアクリル板は水面を表し、こちら側とあちら側を分けるように佇んでいる。森山は、杯の中の水に顔をつけ、そこに存在する、「自分」の姿を求めるようにもがきはじめた。

透明なアクリル板には、この試みの骨子ともいうべき仕組みが隠されている。それが、骨伝導の技術を用いた振動スピーカーである。

アクリル板に耳をあてると、その場で、その瞬間にレコーディングした観客の声や衣擦れの音が、ノイズとなって聴こえるようになっている。水面に反射する自分を目撃するように、エーコーの反響を耳にするように、音による実験が行われていた。この振動は鼓膜を通すのではなく、骨を通して脳に届く。

森山は苦悶し、次第にゾンビのように動き出す。人体に対する既成のイメージがくずれてゆく。彼の体は崩れ落ち、地面を這い、まるで見えない線で引っ張られるようにゆっくりと起き上がる。そしてまた崩れ落ちる。その反復は美しく、そして目を背けたくなるほどにグロテスクだった。

「VERTIGO」の掲げるステートメントは、”情報化社会において「個人を取り戻すこと」にまつわる模索”である。

このステートメントについて理解を深めるにあたって、ひとつのニュースを紹介したい。「ドナルドトランプの選挙運動」だ。

米国大統領・ドナルドトランプは、自身の大統領選の勝利を「SNSによるものだ」と発言した。当人の発言の意図とは異なると思われるが、その背景は、NETFLIXのドキュメンタリー「The Great Hack」で詳しく描かれている。大量の個人情報を分析し、個人の嗜好や生活、属性などを分類した上で、選挙権を持つ人々の中でも、①クリントンからトランプへ鞍替えしそうな人 ②選挙戦が拮抗しそうなエリアに住む人 に狙いを絞って、トランプに傾くような情報をSNS上で表示し続けた。この広告戦略を実行した政治コンサルティング会社「ケンブリッジアナリティカ」の代表アレクサンダー・ニックスは、内通者の告発によって停職となり、同社は廃業。大量の個人情報をFacebookのクイズアプリを通じて獲得し、不正に選挙運動に用いたという疑惑がかけられている。

ここで起きたのは、テクノロジーの悪用による、「個人の無意識の乗っ取り」である。選んだのではなく、実は選ばされていた。メディアによる洗脳は旧くから様々な局面で行われてきたことだが、インターネット時代におけるそれは、より巧妙に「私」の領域を侵しつつある。

「VERTIGO」の根底にあるのは、「自分とは何か?」という問いだ。変化し続ける時代の鏡として、自分という存在の定義は変容し続けていく。終演後、この空間芸術の背景にある問題意識や思想、そして三者の関わり方についてのインタビューを行った。

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