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FEATURE
Bumbershoot x Mountain Research, Sidewalk Trek Recommendations.
The New Back Road Walker

Bumbershoot x Mountain Research,
Recommendations for sidewalk trekking.

暮らしが大きく変わったこの数年で、アウトドア人口は一気に増えた。自然や野生動物を愛でる人、悪路や未踏に挑む人。ハマった理由はそれぞれでも、ハイテクなギアや特別な装備を嬉々として取り入れがちなのはみんな大体同じだ。でも、〈バンブーシュート〉の甲斐一彦さんと、〈マウンテンリサーチ〉の小林節正さんはそのずっと前から傾倒してきたにも関わらず、普段と同じような格好で山へ向かう。本当にいつも通り、中目黒で見かける時とほぼ変わらない。そんな日常着での山歩きを是とする両者による恒例コラボの最新回では、やっぱりありふれた、でもどこかが確かに違う5つのアイテムが出揃った。彼らは山と、そこでの装いに何を求めてこれらの服をつくるに至ったのか。すべてのモデルを手掛けたパタンナーの矢實朋さんも交えたトークセッション。王道のトレイルからはちょっと逸れた、彼らのトレックスタイルが見えてきそうだ。

※BAMBOO SHOOTS ONLINEでは5つのコラボアイテムをそれぞれより詳細に掘り下げたインタビューを掲載。アクセスはthis way (direction close to the speaker or towards the speaker)From.
  • Photo_Yuma Yoshitsugu
  • Text_Rui Konno
  • Edit_Ado Ishino

PROFILE

小林 節正
セット代表/マウンテンリサーチ 代表

1961年生まれ。シューデザイナーとしての活動を経て1994年にアパレルブランド〈ジェネラルリサーチ〉を立ち上げる。現在はその名を改め、〈マウンテンリサーチ〉他、用途に合わせたレーベル名を立てて、専門性の高いプロダクトやスタイルを探求している。長年のフィールドワークや私設キャンプ場での経験を生かして昨年、山梨県道志村にオープンしたキャンプ場「水源の森キャンプ·ランド」をプロデュース。

PROFILE

甲斐 一彦
バンブーシュート ディレクター

1973年生まれ。10代で古着の世界にどっぷりハマり、’95年に今はなきヴィンテージショップの名店、「メトロ・ゴールド」のスタッフに。その後店長などを務めたのちに退社し、’98年に「バンブーシュート」をオープンした。当初はセレクトショップとして国内外のアウトドアブランドをピックアップしてスタイルの提案を行っていたが、現在はそれに加えて同名の自社ブランドも展開している。

PROFILE

矢實 朋
パターンメイカー/スタビライザージーンズ デザイナー

1978年生まれ。文化服装学院でメンズウェアのパターンメイキングを学び、独立後は国内外の名だたるコレクションブランドのオファーを受け、パターンを手掛けている。在学中には古着屋にも籍を置いていたヴィンテージ通で、服をよく知り掘り下げているデザイナーたちからの信頼はことさら厚い。2007年にはデニムブランド、〈スタビライザージーンス〉を設立し、自らデザインも行っている。

王道しか許さない、日本の山の感じが嫌でしょうがなかった(小林)

ー みなさんお忙しい折にありがとうございます。こちらからは質問を投げかけつつ、基本はお三方で自由にお話ししていただきたいなと思っています。

小林節正(以下小林):ハイ。最終的には甲斐のスター性を紐解くってことでいいの?

甲斐一彦(以下甲斐):えっ!?

ー そう……ですね。そこを目指して進めていければなと。

矢實朋(以下矢實):(Laughter)

小林:じゃあ何とかそこのところまで行きましょうか。

ー ただ、割とマジメに聞きたいことを用意して来てまして(笑)。まずは前段として、〈マウンテンリサーチ〉と〈バンブーシュート〉のコラボレーションがいつから、どうやって始まったのかを伺っても良いですか?

甲斐:9年前ぐらいですかね、始まったのは。

小林:もうそんな経つの?

甲斐:取り組みとしてはそれくらい経ちますね。ただ本格的にスタートしたのは’21年の春夏からです。〈バンブーシュート〉ブランドをフルリニューアルしたタイミングでお声がけさせてもらって、毎シーズン継続してものづくりをさせてもらっています。

小林:Yes, it is.

甲斐:はじまりとしては小林さんのところで買ったプリントのネルシャツが好きすぎて延々と着てたら

小林:チェック柄が消えちゃったんだよね。

甲斐:はい(笑)。プリントの柄がなくなって生地に穴も開いちゃって。そのシャツを小林さんに認識してもらった時、これは何か「(一緒に)つくれるチャンス……掴んだかな」って思いました(笑)。

矢實:(Laughter).

甲斐:そうして掴んだきっかけを大切に(笑)、一緒にシャツをつくらせてもらったのが最初です。2013年ですね。小林さんがいつも着ているB.D.シャツがすごく格好良くて、ぼくはぼくでB.D.シャツがずっと好きだったんですけど、小林さんとだったらかならず良いものがつくれると思ったんです。「Ph」の文字をお借りして胸に刺しゅうを入れたオックスフォード生地のB.D.シャツを制作しました。小林さんのつくるものは元ネタがちゃんとある中でまったく新しい物になるから、一番尊敬できる先輩のお仕事の仕方を勉強させてもらえた最高の機会でした。

高密度、そして極厚のコットンオックスフォード生地を使ったB.D.シャツ。2013年のコラボ初回時には通常のフロントオープンのスタイルでリリースされたものが、プルオーバー仕様にアップデートされてリリース。右胸には当時と変わらず「Ph」の刺しゅうを、左胸のポケットは2層構造にして、内側はスマホやサングラスが収納しやすい深さにしている。プルオーバートレック ボタンダウンシャツ ¥28,600

ー 小林さんは最初に合作の提案を受けた頃のことは覚えていますか?

小林:甲斐に会うたびに柄がどんどん消えていってるのが分かってたし(笑)、「やりたい」って言うからさ。ところが、その頃になると当初使いたかったプリント版が残念ながら捨てられちゃってて(笑)、ゼロから版を作り直さなきゃならなかったんだけど、これによって一緒にやってる感が強くなった気がする。

ー 〈マウンテンリサーチ〉で言えば〈リーボック〉との取り組みなど話題性が強いコラボもありましたけど、甲斐さんたちとはすごく自然に始まったんですね。

小林:そういうのは長らくやってなかったんだけど、いい加減やっても良いかって話したのが5年ぐらい前からだっけ?

マウンテンリサーチ・安倍昌宏:はい。その辺から小林さんが柔らかくなってきたというか(笑)、広がっていった感じがありました。

小林:俺の責任らしいです(笑)。

甲斐・矢實:(Laughter).

小林:つくってる側としては「これよく着てます!」とか言ってもらったり、着すぎて柄が消えてったりする姿を見るのって、そりゃ楽しいから。突然見知らぬヒトとか会社から「やってください」みたいな話じゃまず始められないし、そもそも甲斐とは中目黒のご近所同士だからね。その昔、甲斐が主催してた川沿いのゴミ拾いにも誘ってもらったこともあるし、ウチの山にも遊びに来てくれてたし。気づいてみれば長年一緒に遊んでる、言ってみりゃまぁ仲間だよね。

ー 今シーズンは5型をつくられたそうですけど、説明に目をやると「トレック」や「ハイク」という言葉が何度も出てきます。コンセプトをそこに定めた理由も教えてください。

甲斐:ウチのお店はトップレンジのアウトドアブランドのギアやウエアを揃えていたり、自分でも使ったりしてるんだけど、あれはスポーツに近い世界の話。小林さんとやるならスポーツじゃなくて、本来自分たちが思っているアウトドアのスタイルが良いと思ったんです。速乾だとか防水だとか伸縮性といったハイテクの領域も大切なんですけど、自分たちにそこまで必要かと言うとそうじゃないし、天然素材も大事にしたかったから。

小林:「アウトドア」ってくくりの中で見ることができる山景色とでも呼べばいいのかな…そういったところの中で、何か一緒のものが見られるといいよね、って。俺は山登りはしないし、でもやってることはやっぱりファッションなわけだし、せっかくならハイテク領域とは違う風俗の範疇でやりたいって思うよ。機能ウェアをやるには、こっちには何のスキルもないわけだし…。

ー その風俗としてのアウトドアが、トレックだと。

小林:風俗が多分に絡むのは山登りでもないし、山の下に行けばそれも山の話じゃなくなっちゃう。たとえばアメリカはトレックの歴史も長いし、ロードも長い。日本みたいに、裏山に行くとすぐ登山が始まっちゃう、みたいことじゃないからさ。平坦なところや未開林が多いってことでトレックなわけで。登りも下りも緩い。ウチの石井(秀明さん。マウンテンリサーチ PR)がアパラチアンに行った時は、途中から登ってきたやつが街からピザボックス抱えて来てたって言ってたね(笑)。

甲斐・矢實:(Laughter).

小林:王道しか許さない感じとか、正面玄関から正しく入ってくる人間しか許さないみたいな日本の山の感じが嫌でしょうがなかったから、俺はそこじゃない所が良いなって。もっと噛み砕いて言うと、(グレイトフル・)デッドとかフィッシュ聴いて歩いているような奴が沢山いる場所じゃないと居心地悪くてやってらんないのよ。自分と甲斐がやってるのは、そういう場所をトレッキングするなら、っていう話。その時こそ使えて役立つギミックを持ったディテールで構成されるのがいいんじゃないのかなって。

INFORMATION

今回のコラボモデルも擁する〈バンブーシュート〉2022年春夏の最新ルックのzineが限定配布中。登場するのは中目黒に集う21人のいつもの仲間たちのポートレート。中目黒の「バンブーシュート」はもちろん、同じ目黒川沿いにある小林さんのお店「ジェネラルストア」、お隣の「カウブックス」などでも配布予定。詳細はバンブーシュートオンラインにて。

bamboo shoot

住所:東京都上目黒1-5-10 中目黒マンション107号
電話:03-5720-1677
Hours: 11:00 - 20:00

バンブーシュートオンライン
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