あまりの人気で世界的に品薄の状態が続いた2022年の “it watch” が「バイオセラミック ムーンスウォッチ」です。リミテッドエディションでないにもかかわらず、ニューヨークやロンドン、東京のお店は連日大行列で賑わいました。
〈オメガ(OMEGA)〉と〈スウォッチ(Swatch)〉がその歴史ではじめてコラボレーションしたこのコレクション最大の見どころは太陽系を構成する11の星――水金地火木土天海冥、そして太陽と月――になぞらえたカラーパレットにあります。
パステルピンク(金星)、ペールブルー(天王星)、ブルー&グリーン(地球)といったポップなカラーはこれぞ〈スウォッチ〉の面目躍如でしょう。
そんなカラーの持ち味を最大限生かすボディ素材、バイオセラミックも特筆に値します。〈スウォッチ〉が昨年満を持して完成させたエコロジカルなマテリアルで、セラミックにひまし油を原料とした混合素材が配合されています。軽量性、弾力性、耐久性に富み、シルクのような滑らかな手触りもある――といった具合に腕時計のマテリアルとしても申し分がありません。
ベースモデルはいわずと知れた「スピードマスター」。アポロ11号の乗組員、ニール・アームストロング船長、バズ・オルドリン、マイケル・コリンズが手首に巻いて、ムーンウォッチの異名をとった〈オメガ〉のアイコン的モデルです。
いうなれば、〈オメガ〉は〈スウォッチ〉という新たなエンジンを手に入れて、太陽系へと足を延ばしたというわけです。遅まきながら注釈をつければ、コレクション名に冠したのはムーン “ス” ウォッチです。その存在を主張する巧妙な手口には思わず笑みがこぼれました。
細部に目を転じても期待が裏切られることはありません。非対称のケース、タキメーターに施されたドットオーバー90、サブダイアル…〈オメガ〉のファンなら思わずにんまりすること請け合いのスペックのオンパレードです。宇宙服の上からでも装着できるという触れ込みのベルクロ®ストラップやそれぞれの星が描かれたバッテリーカバーも見逃せません。
今回のコラボにあたり、〈オメガ〉の社長兼CEOのレイナルド・アッシェリマンは次のようなコメントを出しました。曰く、〈スウォッチ〉の勇気がなければ、〈オメガ〉の歴史はもっと短くなっていたかも知れません――。
クォーツショックに見舞われた1970年代以降、機械式腕時計のメーカーは十余年にわたって苦い思いをしました。〈オメガ〉がこの時代を乗り越えることができたのは、「スウォッチ グループ」の傘下にあったから。〈スウォッチ〉がひとり気を吐き、グループの面々を走らせる “エンジン” となったのです。
かつては会社存続の危機を救う “エンジン” として、そしていままたデザインの可能性を広げる “エンジン” として――。〈スウォッチ〉が果たした役割は計り知れません。
メジャーブランドがタッグを組んだという歴史的快挙、見事な化学反応をみせたデザインワーク、伏線としてのバディムービー的な物語。「バイオセラミック ムーンスウォッチ」はあらゆる意味において、ウォッチヒストリーにその名を刻む可能性を秘めています。
BIOCERAMIC MOONSWATCH COLLECTION
Mission to Venus
価格はすべて¥33,550
「スウォッチストア」の原宿店、渋谷店、大阪店で発売
MOONSWATCH PLANET TOUR
「ムーンスウォッチ」を販売してない地域に届ける企画がスタート! ツアーで使うクルマは〈オメガ〉の「スピードマスター」と同じ1957年生まれの「FAIT 500」。11月初旬まで東京・銀座の「ニコラス・G・ハイエック センター」に停車した後、日本各地をまわります。時計の販売のタイミングは入荷状況により、並ばないと手に入らないことも。購入はひとり1本のみなのでご注意を。ツアーの詳細は〈スウォッチ〉のインスタグラムで発表。
クルマが停車する「ニコラス・G・ハイエック センター」の風景。時計を購入するための列ができている。
Photo_Kazuma Yamano(Still Life)
Text_Kei Takegawa