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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.69 “攻めればファッションは楽しい”。 イタリアブランドのド派手ジーンズ。

In the 1990s, the term "vintage" was used to describe vintage clothing that did not meet the definition of "antique," but was still valuable. Nowadays, there is a movement to find new value in "new vintage," even in old clothes from the 1980s onward, which were called "regular" at the time. In this project, four vintage clothing stores with different styles propose new ways to enjoy vintage clothing. Each of them will talk about the charm of vintage clothing with their own sense of style.

ショップが全て入れ替わって9シーズン目がリスタートした当連載。2巡目のスタートである第69回目は、再び「リールー(LeeLoo)」のほりけんさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


ほりけん / LeeLoo 店主
Vol.69_モスキーノ ジーンズとヴェルサーチ ジーンズ クチュールのパンツ

―さて、前回はテクノ系Tシャツを挙げていただきましたが、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

イタリア・ミラノ発のデザイナーズブランドが以前から気になっていまして……。そういったブランドって、ジーンズなどを展開するカジュアルラインがあったりするんですが、今回はそこでリリースされたボトムスを取り挙げたいと思います。

―なるほど。00年代初頭には〈プラダ(PRADA)〉の〈プラダスポーツ(PRADA SPORT)〉がストリートで人気を博していましたし、そういったアプローチはいままた新鮮かもしれません。具体的にはどういったブランドが面白そうですか?

まずは〈モスキーノ(MOSCHINO)〉。創立者はフランコ・モスキーノ。彼は14歳で高級仕立屋で働いた後にミラノで芸術を学び、1971年からは〈ヴェルサーチ(VERSACE)〉などでイラストレーターやデザイナーとして働きました。そして1983年に自身の名を冠してスタートさせたブランドが〈モスキーノ〉です。

―調べてみると、1984年にはミラノコレクションにデビューし、強烈な個性的なコレクションで人々を魅了し、人気を獲得。近年のトピックとしては、2013年にクリエイティブ・ディレクターとしてジェレミー・スコットが就任したのも記憶に新しいところ。

やはり70年代から80年代、ファッション業界が圧倒的な熱量とパワーを持っていた時代を通ってきたブランドらしく、派手で色鮮やかでエネルギッシュ。そういったデザインのテキスタイルの印象が強いですね。今回は1987年にカジュアルラインとして誕生した〈モスキーノ ジーンズ(MOSCHINO JEANS)をピックアップしました。まずはチェック柄のデニムパンツから。1990年代のものだと思われます。ポイントは、ブランドネームをステッチのようにあしらい3色で構成したチェック柄テキスタイルを使用している点。ストレートシルエットで普通に履きやすいデザインだと思います。

モスキーノ ジーンズのパンツ2万9900円(リールー)

―アメカジでもパンクでもないチェックパンツって感じでイイですね。

背面のレザーパッチにはブランドネームと、ピースマークとハートマークで“PEACE&LOVE”を表現。存在感があって格好いいですよね。ウォッチポケットには織りネームタグがあしらわれていますが、よく見るとリベットもブランドネーム入りのオリジナル。細部まですごく凝っています。そしてもちろん、メイド・イン・イタリー。

―2万9,900円という値段は、この手のアイテムの市場平均相場的にどうなんですか?

海外のマーケットではアメリカなら300〜500ドル、ヨーロッパ圏では250~450ユーロとすごく高騰しているので、日本円に換算すると4万~7万円程になっちゃうと考えると、ウチはかなり安く出していると思います。ただ、日本ではまだそこまで評価がされていないため探している人も少なく、そうなると仕入れも難しい。海外では高くて買い付けが難しく、国内では評価が低いのでタマ数も少ない。ゆえに出会うことさえできれば狙い目というところも、今回ピックアップした理由にあります。

―サイズに関してはどんな感じですか?

ウエストは32インチ。イタリアのブランドに限らず、当時作られていたこういった柄物のパンツって、スキニーに穿くのがお約束でしたし、ウィメンズものも多かったりするんで、大多数が30インチ以下の小さめで、下手したら27インチなんかがデフォルト。そういう意味ではちゃんと大きめで、多少ゆとりをもって穿けるサイズ感のモデルが出てくるのは珍しいし、数も少ない気がします。

―そして2本目も〈モスキーノ〉ですが、こちらの柄は?

遠目にはチェック柄にも見えますが、近寄ってみるとドット柄。感覚的にはチェック柄をドット分解してズームしたみたいな。素材としてはもう少し薄手でしょうか。〈モスキーノ〉はデザイナー自身が芸術を学んでいたからか、なんとなく1980年代~90年代のポップアートの匂いがするテキスタイルが多くて、すごくオシャレです。

モスキーノ ジーンズのパンツ2万9900円(リールー)

―バックポケットにもレザーパッチが。

そうそう。チェック柄の方にもありましたが、レザーパッチやフロントボタンと同じピースマークがモチーフです。しかもよく目を凝らすと、折り返し部分がクルッと回ったアーキュエイトステッチ風のステッチが入っていて、これも可愛いんですよね。ちなみに先ほどのモデルとは違ってボタンフライになっていて、それらもすべてオリジナルのピースマークボタン。ヤバイくないですか!?

―で、お次は〈ヴェルサーチ〉のカジュアルラインである〈ヴェルサーチ ジーンズ クチュール(VERSACE JEANS COUTURE)〉です。先ほど〈モスキーノ〉のデザイナーの古巣という話もありましたし、どこかリンクする部分がありそう。こちらも調べたところ、誕生は1988年。その後、一時休止したのち2019 年に復活して、現在はオリジナルラインの反骨精神と遊び心にモダンなアクセントを効かせた、現代的なデザインを展開しているとか。ネットで現行のアイテムを調べたところラグジュアリーストリートって感じでした。

〈ヴェルサーチ〉といえば、ブランドのアイコンでもあるメデューサがデザインされたものが有名ですし、当時から海外のセレブリティやミュージシャンがこぞって着用していたことからも察することが出来るように、煌びやかでゴージャスな雰囲気のアイテムが多いのが特徴。実際、ミュージシャンの衣装やツアーグッズの製作を手掛けたり、ランウェイでゴリゴリのロックミュージックをかけるなど音楽との親和性がある点もぼくは好きです。そこで今回用意したのは90年代のモデルです。

ヴェルサーチ ジーンズ クチュールのパンツ2万9900円(リールー)

―これまた派手ですね(笑)。

花柄とドット柄のミックスです。ぼくはユニークなデザインの服が好きなんですが、先ほどの〈モスキーノ〉然り、ココもシーズンごとにグラフィックやデザインも大きく変わるため、色々なパターンが見つかるのが魅力。どのシーズンにも共通するのが華やかさとインパクトがある点。そこに惹かれて集めています。ただ種類が多い割にタマ数は少ないため、今回紹介したモノをピンポイントで探すのは難しいという点がウィークポイントではありますが…(苦笑)。

―シルエットはかなりタイト。ユニセックスのアイテムですか?

股上浅めでヒップポケットの位置が高いのはウィメンズだから。素材はストレッチが効いていて薄手。フロントはジップフライ。こちらもトップボタンはオリジナルのメデューサボタンで、さらにリベットもメデューサ。サイズ表記が消えてしまっていますが、27~28インチくらいでしょうか。伸びる素材なので、31インチくらいまではイケそうです。気持ちフレアがかったフォルムなので、スラっとした方に穿いてもらえたら格好いいんじゃないでしょうか。で、もう一本は多分2000年代だと思われます。

ヴェルサーチ ジーンズ クチュールのパンツ2万9900円(リールー)

―これはウエストが結構大きめですね。

先ほどのモデルに比べるとかなり大きめです。しかも前オーナーがウエストを脇で開いて生地を足すリメイクを施しているので、元サイズこそ表記34ですが、そこからさらに大きくなっています。ディテールではトップボタンもパッチも健在。気になる柄はディスク柄です。時代背景と周囲にケースも描かれていることを考えると、モチーフはCDですかね。以前、同じテキスタイルのシャツを売ったことがあるんですが、元々はセットアップだったようです。

―これまたユニークなデザインで。

やっぱり音楽と繋がりの深いブランドだから面白いですよね。レイブ好きにも反応が良さそう。ただ世代的に大人の方にもイケると思うんです。本場イタリアだとこういった柄物のパンツに綺麗な革靴を合わせたりするので、そのノリで合わせてもイイし、ちょっとカジュアルダウンしてヴィンテージのTシャツやスニーカーと合わせてラフに着てもらいたいですね。当時の履き方では絶対的にタイトだったと思うんですが、今回紹介したアイテムのように大きめを選んでもらえれば、今の着こなしにも落とし込みやすいのかなと。

―なるほど。大人世代は派手なアイテムを敬遠しがちですが、挑戦し甲斐はありますね。

やはりファッションを楽しむためには、年齢を気にし出したらダメです。意を決して穿いてみると意外とイケたりするので、若い世代はもちろんですが「最近のファッションは面白くない」と嘆いている大人世代にこそ“ファッションは楽しい”という気持ちを思い出させてくれる、攻めのアイテムに挑戦してもらえたらと思っています。

ほりけん / LeeLoo 店主
1940年代〜2020年代まで、年代やブランドに囚われず“服として格好いいモノ”を幅広くセレクトするショップ「リールー(LeeLoo)」の店主。ワーク、ミリタリー、ストリート、ヒッピー、ロック、ハイファッションなどジャンルレスに、かつ各カテゴリーのカルチャーを大切にしながら、2020年代だからこそできるファッションの楽しみを提案する。今年5月3日に、高円寺から渋谷に移転リニューアルオープン。
Instagram:@leeloo_shibuya

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