Gucci.のアイコンといえばホースビットも見逃せないひとつである。その名の通り乗馬の世界にインスピレーションを得て1953年に誕生。ホースビットが施されたローファーは、フレッド・アステアをはじめとしたハリウッド・スターを発火点に世界へ飛び火した。
当時、彼の地ではアイビー・ルックが席巻していて、アイビー・リーガーのワードローブに欠かせない靴がローファーだった。ホースビットは大学を卒業した彼らの足にジャストフィットしたのだ。脱ぎ履きが容易なローファーを知ってしまうとなかなかもとに戻れないけれど、学生と同じ靴は履きたくない──というプライドをくすぐるかたちで。
つまるところ〈グッチ〉はいち早くラグジュアリーの世界にコンフォートというコンセプトを採り入れてみせたわけで、その先見の明には驚かざるを得ない。ご存じのようにコンフォートはいまやファッション・ブランドにおいて軽んじることのできないものだ。先進性を裏書きするように1985年にはメトロポリタン美術館の永久所蔵コレクションに加えられた。
クリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレはこのアイコンをスリッパに掛け合わせた。爪先にボリュームをもたせたコンフォートシューズ特有のオブリック・ラストながら、見事に贅肉を削ぎ落としたフォルムはブラック×ゴールドのプレシャスなカラーパレットと相まってモダンの一言。
コンフォートを求める声は日増しに高まるばかりだ。これに応えるラグジュアリーな一足とは──。“怠け者” の異名をとる一足に勝てるのはたしかにスリッパしかない。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa
Edit_Ryo Muramatsu
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