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スタイリストとの対話で紐解く香川で生まれたブランド、パース プロジェクト。
What is PERS PROJECTS?

スタイリストとの対話で紐解く香川で生まれたブランド、パース プロジェクト。

“神は細部に宿る”という言葉が大袈裟でも何でもなく、素直に受け取れるブランドが香川県にあります。その名も〈パース プロジェクト〉。生産のほぼ全てを県内を中心としたエリアで完結させるそのアイテムは、シンプルなデザインの中にディテールへの細やかな気配りが内包されています。今回はデザイナー 伊藤裕之さんとスタイリストの八木智也さんとの対話を通して、ローカルでモノづくりをすることの意味と意義を見つめます。

世界的アーティストが惚れ込んだ香川県のモノづくり。

ストレスのない着心地や着た人の魅力を引き立てるようなシルエットを支える、縫製技術。生産するアイテムの9割を香川県周辺でつくっているのには、どうやら訳があるようです。

八木: 独立されても香川県でつくり続けてらっしゃるのはどうしてなのかなと思っていて。香川県は服づくりが盛んな土地なんですか?

伊藤: あまり有名ではないんですが、縫製工場が結構あって服づくりも盛んですね。香川県の東側、徳島寄りのエリアは、国内でつくられる手袋の9割がつくられていたり、岡山県の児島から近い西側の坂出というエリアでは、児島の下請け工場が多く、デニムの縫製が得意な地域ですね。児島でつくられたデニム生地が届き、坂出で縫製され、また児島に戻って加工する。シャツやカットソーの生地も近場の兵庫県と和歌山県に多いですし、輸送コストもタイムラグも少なくできるのが利点ですね。その他にもドレスシャツの縫製に長けているところだったり、ほとんどのアイテムは香川県の周辺でつくることができるんです。モノづくりに関して1番整っている地域だと僕は思ってます。

八木: 何でもつくれてしまうんですね。もちろん、長くやってきたからこそのコネクションみたいなものもありますよね?

伊藤: 慣れもあると思うんですけど、車で1時間圏内に工場があることで職人さんと直接やりとりできるというのが自分にとってすごくメリットなんです。今回のデニムは新しい工場とつくったアイテムなんですけど、直接話してなかったらもっと難しかっただろうなって感じています。

八木: そっか、細かいニュアンスとかは直接伝えた方がわかりやすいですもんね。

伊藤: そうなんです。デニムって他のパンツと違って、生地や縫い代の取り方、パターンとか特殊なんです。そういうディテールの違いとかを直接教えてもらうことで、こちらも理解が深まりますし、じゃあこうしてほしいとか細かい部分をその場で伝えられて調整してもらえるんですよね。

八木: そういうのは近くにいないとできないことですもんね。

伊藤: 僕の服はシンプルなデザインなので、細い詰めの部分がすごく大切だと思っています。遠方から通ったりもできないですし、メールだとなかなか伝えきれない部分も多い。加工に関しても工場任せにしてしまうと、想像以上にやりすぎた状態で戻ってきたりすることも多いんです。ダメージが入りすぎだったり、色が落ちすぎていたり。今回の色落ちしたデニムもケミカルっぽい雰囲気は出したいけど、まんま80’sの服をつくりたいわけじゃない。そういうニュアンスの部分は、直接会って、モノを見て話した方が伝わりやすいと思いますね。痒いところに手が届くって感覚です。

八木: 香川県は元々職人気質な方が多いんですか?

伊藤: 僕はそう思いますね。イサム・ノグチ*1のアトリエが香川県にあったんですけど、なぜ香川県にあるかというと彫刻に適した良い石が採れるからなんだそうです。さらにその良い石を見立てる職人がいたそうで、その人がいるから香川県に工房があったと聞いたことがあります。それとジョージ・ナカシマ*2の椅子をつくっている工房もあって、元々はそこでしか技術的につくれなかったそうなんです。そういう優れた職人が昔から多かったんだと思います。

*1 モニュメント、庭や公園などの環境設計、家具や照明のインテリアから、舞台美術までの幅広い活動を行った、20世紀を代表する彫刻家。1956年、初めて庵治石の産地である香川県の牟礼町を訪れたノグチは、1969年からは五剣山と屋島の間にあるこの地にアトリエと住居を構え、以降20年余りの間、NYを往き来しながら石の作家である和泉正敏をパートナーに制作に励んでいた。(参考:イサム・ノグチ庭園美術館

*2 20世紀を代表する家具デザイナーの一人。1964年、彫刻家・流政之の薦めで来日し高松に来る。 そこで大都市の影響を受けないで職人の手を活かしたプロダクトをつくり出そうとする運動の「讃岐民具連」を知りおおいに共鳴、自らその一員となったとされる。(参考:ジョージナカシマ記念館

シンプルなデザインに内包された緻密な計算と職人の技術力。八木さんが気になったアイテムにも繊細なステッチワークが隠されているようです。

八木: 最近ベージュとか白が気になっていて、そういうアイテムも豊富なのがいいなって思ってました。デニムは生成りとケミカルとインディゴの3色がありますけど、つくり方とか工程って変わるものなんですか?

伊藤: つくり方自体は一緒なんですが、生地によって硬さが全然違うんです。インディゴのデニムは糊がついてるので硬くて縫いやすいんですけど、生成りは糊がついてないので柔らかくてミシンの強い力に生地が持っていかれることがあって縫いにくいんです。

八木: 生地によっても違うんですね。縫いやすい、縫いにくいなんていままで気にしなかったことなかったです。

伊藤: 縫製一つとっても、それぞれの生地に合わせたやり方があったりするので、職人さんの技術力はすごいですよ。

八木: そういう話を聞くと、見る目が変わってきますね。それとウエストのゴムが後ろ側だけに入ってるのがいいですよね。締め付けもそこまでキツくないし、ベルトなしでも穿けてタックインしたときの見た目もいいなと思いました。

INFORMATION

PERS PROJECTS

オフィシャルサイト
Instagram:@pers_projects

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