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前代未聞のカメラバッグ。モノリスのシューティングトートは、いかにして生まれたか。
Directed by Katsuhide Morimoto & Keiji Kaneko

前代未聞のカメラバッグ。
モノリスのシューティングトートは、いかにして生まれたか。

カメラバッグと聞いて、どんな形を思い浮かべますか? 〈ドンケ(DOMKE)〉のようなショルダーバッグ? 〈ペリカン( PELICAN )〉のようなキャリーバッグ? まぁだいたいこのあたりが定番でしょう。そんななか、まったく新しいタイプのカメラバッグが完成しました。手がけたのはフォトグラファーの守本勝英さん、ファッションバイヤーの金子恵治さんという珍しいタッグ。さらに生産を担当したのはフイナムではお馴染みの〈モノリス(MONOLITH)〉です。我々は企画会議の段階からものづくりの動向をつぶさに追いかけてきました。出発点にあったのは「カメラバッグには正解がない」という嘆きに近いひと言。そこから思いも寄らないバッグが誕生しました。足掛け約3年のビッグプロジェクト、その全容をここにお届けします。

  • Photo_Masayuki Nakaya(STEP1),Keiji Kaneko(STEP3),Tadayuki Uemura(STEP4)
  • Text_Tsuji
  • Edit_Ryo Komuta

STEP02:SELECTION カメラバッグでトートという新しい発想。

今回のミッションは、カメラバッグの方向性を定めること。前回のアイデアをベースに金子さん、守本さんが気に入っているバッグを持ち寄り、アイデアを出し合って具体的にどんなバッグをつくるのかを決めていきます。果たして、二人の意見は合致するのでしょうか?

中室: 今回はおふたりにお気に入りのバッグを持ってきてもらいました。

金子: ぼくはバックパックと、ショルダーバッグを持ってきました。バックパックは旅行用に買ったんですけど、トップの部分が蓋のように開けられて、サッと上から取り出せる。レンズを縦に収納できるのが使いやすくていいなと。これはパソコンも入れられるので便利ですね。

金子: ショルダーのほうは日常でいちばん使っていて、これも蓋を開けてサッと必要なものが取り出せます。バックパックだとアクション数が増えるけど、ショルダーなら少ない手数で必要なものが取り出せるので便利ですね。これはカメラが3つくらい収納できて、容量も申し分なしです。

守本: ぼくはトートバッグを持ってきました。バックパックも使っていたんですが、結局取り出すのが手間なんです。例えば海外でロケをするときとかは、ホテルに機材用のバッグを置いて、ロケに必要なモノをトートバッグに入れて持ち歩くことが多くて。そこに長いストラップがついていると、移動のときも便利。とにかくシャッターを押すまでのアクション数を減らしたいんです。

中室: それにはトートがいちばんということですか?

守本: そうですね。横からサッとカメラを取り出して、パッと撮れるので。メッセンジャーとかショルダー型だと、フラップを開けるところから始めないといけないでしょう。移動のときはショルダーにできるとか、場面によって変形できたらいいなと思ってて。

金子: フラップのないショルダーはどうなんですか?

守本: 海外だとスリとかも多いので、できる限りホールドしておきたいんです。

金子: なるほど。じゃあハンドルの長いトートがいいのかな。

守本: 個人的にはハンドルは短いほうが好きですね(笑)。窮屈なほうがホールドしやすいので。欲を言えばなかに入った機材を守るためにクッション性があるとうれしいです。それで持ってきたのがこのトートなんですけど、外側に大きいポケットがあるんですよ。このなかにiPhoneとか、細かなものを入れていて。ポケットが多すぎると「どこに入れたっけ?」ってなるから、ざっくり入れられればそれでいいんです。

「カメラは色々な持ち方があるんですけど、僕はこういうマジックテープの布で包んでばっと入れちゃうタイプです」とは守本さん。

中室: 金子さん的にこのトートはどう思いますか?

金子: めちゃくちゃいいと思いました。すごく合理的だなって。

中室: カメラバッグでトートっていうのが発想的におもしろいですよね。普通ならメインの収納部分で仕切られているものが、外に出ていて、それが使いやすさに繋がっているんですよね。もともと何用につくられたものなんですか?

守本: わからないです。友達が持ってていいなと思って、ぼくも買って。コットンだと機材が濡れちゃうから、防水系の生地を使ったトートを探していたんです。

金子: このブランドの工場に行ったことありますよ、(イングランドの)バーミンガムでした。

守本: ロケでも使いやすいんだけど、とりあえずカメラを持っておこうっていうテンションの日にも、このバッグは使えるんです。

金子: 守本さんのプロとしての目線もキープしつつ、一般的なことを考えたら、カメラは1台しか持ってないけど、写真が好きでよく撮るっていうひとに向けてアレンジするのも良さそうですね。

守本: そうですね。ちょっとだけカメラが好きで、コンパクトカメラともう1台持ち歩くとか、レンズも予備で1本持てて、SDカードのケースも入れられたら便利ですよね。用途としては旅行に絞ってもいいかもですね。だけど日常でも使いやすい、みたいな。

金子: いろんなメーカーがそういうことを考えているはずなのに、なんでコレっていうものがないんでしょうね。

守本: それをシンプルなトートひとつで解決するのもおもしろいですね(笑)。だけど中身が実はすごいっていう。なかにちょっとした仕切りがあるだけでも便利だったりするので。レンズを入れる部屋と、カメラを入れる部屋があると使いやすいと思います。

金子: たしかにそういうシステムがあると便利ですね。ぼくのショルダーもそういう仕様になっていて、めちゃくちゃ使いやすいんですよ。

中室: いいですね。汎用性を持たせるなら、ベースはトートなんだけど、ショルダー用のストラップもつけられるようにするのが良さそうですね。トートのハンドルはホールドしやすい長さにして、ショルダーのストラップはどれくらいの長さが理想ですか?

守本: カラダにフィットする長さがいいですよね。アジャスターがあって、背負うときにワンタッチでギュッとできるようなイメージ。

金子: バッグのサイズはどれくらいがいいんだろう?

守本: 正直、このバッグは大きすぎますね。もっと小さくてもいいなって思います。とはいえ、小さすぎて可愛くなっちゃうと、今度は大人が持ちづらいですよね。個人的にはパソコンも入れられる大きさが希望です。ぼくが普段使っているのは17インチで結構デカいんですけど…。それはあくまで仕事用なので、もっと小さなサイズのパソコンが入るくらいでもいいかなと。

金子: いいですね。使いやすそう。

中室: 今回のお話でいただいたアイデアを一度お預かりさせていただいて、ぼくらのほうでサンプルをつくってみようと思います。トートなのか、もしくはショルダーとしても使えるものなのか。守本さんも金子さんも求める機能は似ているような気がするので、次回は一度つくったものを見ながら、細部を修正できればと思います。

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