ウエストポーチの歴史。
西野:「ナーディードッグス」では結構な数のウエストポーチを取り扱ってるんですか?
秋元:うちは多い方だと思います。 「ナーディードッグス」って店の名前の下に“Used Outdoor Clothing & Bags”って書いてるぐらいバッグには力を入れていて。そもそもの話なんですけど、アウトドアシーンでは“ウエストポーチ”って名称を使わないんです。ウエストバッグ、ヒップバッグとか。何ならウエストバッグもヒップバッグも別のものです。
西野:そうですよね、ぼくも今回一緒くたにして持ってきました。
秋元:松川さんがいま着用されてるものは、〈パタゴニア〉のヒップボルトってモデル名なのですが、各ブランドでそれぞれ名称やモデル名も違ってたりするんですけど、ある程度ディテールで見分けはつきますね。
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松川:詳しい定義を知りたいですね。
秋元:一概に定義付けはできないんですけど、サイズだったり、後ろにパッドが付いてる、付いてないで分けると、パッドが付いてたら、ウエストバッグの分類ですね。
松川:アウトドアブランドが推奨してるつけ方と、ファッションの文脈でのつけ方って違ってますよね。
秋元:長くなりますが、歴史の話をしてもいいですか?
西野:聞きたい聞きたい。
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秋元:そもそもウエストバッグを日本でファッションとして一般的に広めたのが、おそらく〈グレゴリー〉だと思うんです。 元々アメリカでは山登りだったり、バイクに乗る時など、アウトドアやスポーツシーンでウエストバッグは使われていたのですが、1986年頃に〈グレゴリー〉が日本に上陸してるので、86、7年ぐらいに一部のファッション感度の高いひとたちがテールメイトを腰じゃなく斜めがけで使用して、90年代初頭にそのスタイルが流行したんだと思います。
松川:へぇー。
秋元:ここからはあくまでもぼく個人の憶測なんですけど、テールメイトの初期型、いわゆる“茶タグ”、“紫タグ”のモノは斜め掛けする用につくられていなくて、ストラップが片引きなんです。元々はウエストにつけるアイテムなので、そのディテールで十分だったんです。
西野:なるほど。
秋元:それで93年頃の“青タグ”ぐらいから、ストラップが両引きになって長くなるんですけど、おそらく日本のマーケットを意識して、その仕様になったんじゃないかなと思っています。
西野:めちゃくちゃ興味深い! さすがですね。
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秋元:自分は身につける派じゃないので、ここで爪痕を残しに来ました(笑)
西野:やっぱり「ナーディードッグス」さんだと、ウエストバッグとかは結構売れるんですか?
秋元:いやぁ…そんなに頻繁に売れるアイテムではないですよ。
ー古着文脈で何か語れるほどウエストポーチは盛り上がっていない…?
西野:ウエストポーチが流行るとかはないでしょ!(笑)。あんまり目掛けて買うアイテムじゃないですもんね。便利なんですけど、脚光を浴びるのは多分無理なんですよ。自ら目立とうとしないその奥ゆかしい感じもいいんですよね。
松川:そうなんですよね、古着屋にふらっと入って、「お、いいじゃん」ってなったら買う感じですもんね。
秋元:店では、欲しい服はないけど何か買いたいお客さんが手に取るものですね(笑)
ー コンビニのホットスナック的な。なんとなく頭の片隅にあって、良いのあったら買おうくらいな。
松川:まさにそんな感じです(笑)
西野:一喜一憂しないんですよ、ウエストポーチで(笑)。そんな自分のなかで盛り上がることもないし、周りが盛り上がっていることもない。街中でみんなウエストポーチをしていたら、それはそれで異様ですもん!
松川:別にウエストポーチが流行らなくてもいいです(笑)。変わり者の会でいいんですよ。
西野:やっぱりそこなんですよね。こいつたちにはその力量はないですよね!
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ーお店のディスプレイで一番目立つところに置こうと思わないですもんね。
秋元:隙間埋めです。
一同:(笑)
西野:ただ便利さに関してはピカイチなので、ファッションのメインストリームは無理でも、そういった面では評価ができると思う。だって、子供と公園行くときとかは必ずします。子供の面倒を見るから自分の貴重品だけは落とさないでいようと思うと、ウエストポーチはすごく便利なんですよ。両手も空きますよね。
秋元:秋葉原でオタク活動をしているひとたちが使っているイメージもあって、たしかに便利そう。
ーファッションにあまり興味がないひとでも使っているということは、機能面で言っても折り紙つきってことですよね。