1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
ショップがすべて入れ替わってリスタートした9シーズン目。第69回目となる今回は、「ザ サン ゴーズ ダウン(TheSunGoesDown)」の海野飛竜さんの2巡目です。
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
海野飛竜 / TheSunGoesDown オーナー
Vol.70_フェボのスナックバッグ&ファンスリッパ
―今回、紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?
前回は機能面にフィーチャーしてミリタリーアイテムをご紹介しましたが、今回はカルチャーという別の角度からアイテムを紹介したいと思います。オランダにある飲食チェーン「フェボ(FEBO)」ってご存じですか?
―いえ、はじめて聞きました。
「フェボ」は1940年にオランダのアムステルダムでお菓子屋として設立され、現在は自動販売機でクロケット(コロッケ)を販売するファストフード店です。店内には様々な味のクロケットが自動販売機に綺麗に陳列されていて、数百円で暖かいクロケットが出てきてすぐに食べられる。要は、お手軽なローカルグルメというやつです。普段ヨーロッパに買い付けに行くことが多いので、現地の友人に教えてもらって知りました。種類も沢山あるし日本人好みの味で美味いんですよ。
―へぇ。日本だとどういう立ち位置なんですか?
「マクドナルド(McDonald’s)」と現地で聞いています。国内に75店舗以上を展開し、地域に根ざしたローカルチェーンとして、スキポール空港の到着ホールやアムステルダム中央駅構内なんかにもあったりします。隣国のフランスやベルギーに比べてアメリカのファストフードが多くないのも、この「フェボ」の存在があるからとか。
―国民的人気チェーンであることは分かりましたが、まさか今回紹介いただくのはコロッケですか?
いやいや(笑)。実はこの「フェボ」はグッズもすごく面白いんです。そこで今回は「ファンスリッパ」と「スナックバッグ」を取り上げたいと思います。両方とも赤ボディに白で大きくグラフィックが入っていて、素材の絶妙なチープ感もファストフード然とした雰囲気でイイ感じ。
―あっ、イタリアで展開されているNY発の超人気スケートブランドのそっくりさんみたいですね。
そこも含めてイケてるなと(笑)。「スナックバッグ」は文字通り、スナック=クロケットを入れて持ち歩くのにピッタリなウエストポーチです。収納部は前面に2つ、背面に1つジップポケットを設置。公式サイトの説明によると、HAVOという5年制高校の卒業証書も入るようです(笑)。
―なるほど。まったくピンときません(苦笑)。
ですよね(笑)。まぁ、日本人の感覚でいえばコンビニのオニギリが収まるサイズ感。もちろんレジ前で売られているホットスナックのコロッケを入れるのもオススメです。
―もう1つの「ファンスリッパ」は?
要はサンダルですね、シャワーサンダル型の。こちらも「スナックバッグ」と同様に履き心地は上々。なんせキャッチコピーは“雲の上を歩く履き心地”ですからね。どこかで聞いたようなキャッチコピーではありますが……(苦笑)。
―某デザイナーが〈ニューバランス(New Balance)〉の「1300」を称賛した際の言葉ですね。これらはクロケット同様に自販機で買えるんですか?
いまも変わっていなければ店頭では基本的に販売していなくて、オンライン販売になります。カラーリングはブランドのシグネチャーカラーである赤×白。アイテムによっては逆で白×赤もあります。Tシャツやキャップなどバリエーションも色々あるので、ぜひ公式サイトをチェックしてみてください。
―企業モノも古着の中では人気ジャンルですが、こういったストリートライクなアイテムは珍しいし、狙い目かも。
アメリカだと「マクドナルド」や「フェデックス(FedEx)」「イン・アンド・アウト・バーガー(IN-N-OUT BURGER)」「ピンクス ホットドッグス(PINK’S HOTDOGS)」などなど企業モノがファッションアイテムとして認知されていますし、すごく人気がありますよね。ヨーロッパの場合、日本で人気の企業モノがあまりないので、今後は注目の存在になっていくんじゃないかなと思います。こういったこれまで話題に上がらなかったけど地元では根付いているようなローカル文化が、新たにファッションとして取り入れられていくのを期待しています!
海野飛竜 / TheSunGoesDown オーナー
2010年にアパレルブランドを設立し、自身のキャリアをスタート。幅広い層から支持を集める下北沢の人気ヴィンテージショップ「ザ サン ゴーズ ダウン(TheSunGoesDown)」のオーナー。アメリカ、ヨーロッパのミリタリーやワークを軸に縫製や、色味、素材感を意識した独自のセレクトでユニセックスに展開。厳選されたセレクトとスタイリングに定評があり、今年で12年目を迎える。また、建築設計のディレクションを多数手掛けるのみならず、以前本連載にも登場した「伊藤商店」「ウェッドストア(WED STORE)」とともにWITとして不定期でイベント運営も。
インスタグラム:@tsgd_tokyo、@hiryu_unno