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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.88 “ストラップはダラッと背負わずビッ” 。メッセンジャーバッグは、ハマれば沼。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップがすべて入れ替わり、この連載も遂に11シーズン目に! ラストの第88回目は、「プロップスストア アネックス(PROPS STORE ANNEX)」の藤井 潤 &土井 健さん! 今回は、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


藤井 潤 & 土井 健 / PROPS STORE ANNEX ディレクター
Vol.88_アンダー・ザ・ウェザー&バガブー&パックデザイン&リロードのメッセンジャーバッグ

―さて、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

ウチらしいところでいうと定番として提案しているメッセンジャーバッグに改めて注目したいなと。なので今回は、サイズはバラバラですがいくつかのブランドを用意してみました。現行で生き残っているのは〈バガブー(BAGABOO)〉と〈パックデザイン(PAC DESIGNS)〉だけかな。〈リロード(R.E.Load)〉は2023年に廃業しちゃったし、〈アンダー・ザ・ウェザー(Under The Weather)〉はブランドの権利を手放してしまって全然違う感じのブランドになってしまっていて……。

―あまり聞き覚えのないブランド名もありますね。

〈アンダー・ザ・ウェザー〉は2001年にカナダのトロントで、女性メッセンジャーが始めたブランドです。で、1989年に誕生した〈パックデザイン〉も同じくカナダのトロント発でデザイナーも女性。パックデザインのこのモデルは裏地がターポリン張りになっておらず、パッククロスという〈エル・エル・ビーン(L.L.Bean )〉のブックパックと同じ素材が使われています。それもあって重量も軽く、ショルダーストラップもかなり工夫してあって使い勝手が良いのが特長です。

アンダー・ザ・ウェザーのメッセンジャーバッグ ¥25,000(プロップスストア アネックス)

パックデザインのメッセンジャーバッグ ¥33,000(プロップスストア アネックス)

―こう多種多様ですと、メッセンジャーバッグ選びもなかなかの悩みどころ。ちなみに、サイズはやはりデカければデカいほどイイんですか?

もちろん、デカイのをストラップをビタビタに引き絞って、体に巻きつけるようにして背負うのも格好いいんですが、別にデカけりゃイイってもんではありません。夏は背負っていると暑くてシンドかったりしますし、そこは買って実際に使ってみないと気付けない部分で。実際いちばん使えるのがこの〈アンダー・ザ・ウェザー〉くらいのサイズ感。女性が作っているからか、他ブランドに比べると小さめ。あと調子いいのはこの白い〈バガブー〉。大きさはいわゆるMサイズで「プロップスストア(PROPS STORE)」でも、これの現行モデルをベースに別注しました。

バガブーのメッセンジャーバッグ ¥25,000(プロップスストア アネックス)

ーなるほど。新品のメッセンジャーバッグも扱っているお二人が、あえてユーズドのメッセンジャーバッグを推すのはなぜでしょうか?

どちらかというと逆で、ユーズドで仕入れて自分らでも実際に使っている内に気に入って別注したという順番ですかね。現在のメッセンジャーバッグの様式は、1980年代前半にエリック・ゾーが作る〈ゾーバッグ(ZO Bags)〉で完成されているんですが、その上でみんなが工夫しているのが、耐久性と疲労感を感じさせない背負い心地の追求なんですね。で、それをやり続けているブランドは生き残っている。

ーたしかに。そう聞いてディテールを注視すると、この辺のブランドはショルダーストラップが斜めに取り付けられているのが分かります。

そうそう。背負い心地や使い勝手といったユーザビリティをちゃんと考えて作っていますよね。だから同じようでも少しずつマイナーチェンジされていたりして。これなんかを見ていただくと一目瞭然なのですが、年代が新しいモノは、耐久性を挙げるために三角形の補強を施していたり、ターポリンの裏地に穴を開けないよう表地と裏地をそれぞれ作ってから縫って、防水性を高めていたりします。

ー付属パーツの金具もちょっと違っていますね。

素材を変えて軽量化しつつ、取り外して付け替えることで左右両掛けできるようになっています。あと、先ほどの「メッセンジャーバッグをあえてユーズドで選ぶのはなぜか?」という質問への回答として、基本的にパーツに製造年が記されているので、それを見れば簡単に年代を測定できるっていうのも楽しい。これだと“06009”とあるので、パーツの製造年は2009年だと思われます。

ーオリジナルではなく既成のパーツを使用しているからこその見どころってワケですね。メッセンジャーバッグって、プロユースと一般ユーザー用がありますが、どういった違いがあるんですか?

わかりやすい部分で言うと、より大きく、そして多くの荷物を運ぶためのサイズ感。あと基本的にプロモデルの方が作り自体はシンプルな分、耐久性を高めていたり、ブランドを代表するシグネチャーな機能が搭載されている場合が多いですね。〈パックデザイン〉だとフィット感を向上させるXストラップがそうですし、〈リロード〉の場合はショルダーストラップの仕様に差異があって、ショルダーパッドとストラップが一体化しています。またメッセンジャーブランドにはオーダーメイドを受け付けているところも多いので、ワンオフの仕様が見つかるのもユーズドで掘る面白さですね。

リロードのメッセンジャーバッグ ¥44,000(プロップスストア アネックス)

ー他に注目すべきポイントってありますか?

〈パックデザイン〉のこの角張ったフラップのように、後出のブランドの多くが完成されたフォーマットからの差別化をフラップの形状で図っていたこともあって、そこを見比べると面白いかと。左右非対称になっている〈シーガルバッグ(SEAGULL BAGS)〉なんかもユニークですが、カーブが1番綺麗だと思うのは、やはり〈バガブー〉でしょうか。曲線を縫うのってメチャクチャ難しいんですよ。ぼくらも文化服装学院時代、非常に苦労させられました(笑)。

ー有名無名問わず、ブランドごとのコダワリや違いがあって楽しいですね。

どのブランドも機能性を突き詰めてどんどん進化させていくという姿勢が尊敬に値します。ただカスタマー目線で買う際に注意すべき点を挙げるならプライス。有名無名問わず沢山あるからこそ「なんでコレがそんなに高いの?」ってケースもあったりするので、ちゃんとモノのクオリティを見てジャッジすべきかなと。

ーあとバッグって基本的にヘビロテするので、コンディションも気になるところです。

裏地のコーティングにポリウレタンを使っていなければ、経年劣化してもベタついたりひどい臭いを発するなんてことはあまりないし、別にターポリンが割れていたって使用に支障をきたすわけじゃないので、そこまで気にしないでイイかも。擦れてステッチがはずれたら叩けばいいだけだし、ストラップ部分のプラパーツなんかも新品を付け変えればいいだけですから。ロゴがイヤだったらワッペンを上から貼って隠しちゃうのもアリ。そうやってリペアやカスタムしてあげることで愛着も増しますしね。

ーサラ(新品)のメッセンジャーバッグを使う気恥ずかしさってあると思うので、そういった意味でも手に入れてすぐ馴染んでくれるのはありがたいというか。ちなみに背負い方のオススメがあれば教えてください。

ダラッと背負ってしまうと、バッグ自体の機能性を殺してしまうのでよろしくありません。チャリンコに乗っていない時は別として、乗る時はビタビタとまではいかずともしっかり背負いましょう。その方が格好いいと思うので、その点だけは意識してみてください。

藤井 潤 & 土井 健 / PROPS STORE ANNEX ディレクター
ストリート直撃世代からシティボーイまでを虜にする、原宿発の人気インポートショップ「プロップスストア(PROPS STORE)」、またその姉妹店でグッドなレギュラー古着が見つかるユーズドセレクトショップ「プロップスストア アネックス(PROPS STORE ANNEX)」。その両方をディレクションする広島出身の2人。
インスタグラム:@propsstore_annex
公式サイト:propsstoreannex.shop-pro.jp

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